研究課題/領域番号 |
20K19746
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
東川 雄哉 兵庫県立大学, 社会情報科学部, 准教授 (20749486)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動的フローネットワーク / 施設配置問題 / 最大後悔最小化 / 多項式時間アルゴリズム / 避難計画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は, 理論計算機科学において知られている動的ネットワークフローを用いて, 実応用に即した避難施設配置モデルを構築することである.各本年度の成果は以下の 2 件である. (1) 動的フローパスネットワークにおける平均避難時間最小化型k-施設配置問題に対する新しい高速アルゴリズムを提案した.本結果では,問題が「リンクコストに凹モンジュ性を有する完全有向非巡回グラフにおける最小k-リンクパス問題」に帰着されることを示し,最小k-リンクパス問題に対する既存のアルゴリズムを適用した.リンクコストの計算については,各クエリ計算を劣線形時間で行えるデータ構造を新たに開発して用いている.本結果は,既存アルゴリズム [Benkoczi et al., 2018] の計算量を大きく改善しているだけに留まらず,同頂点上の避難者の異なる施設への避難を許可する一般の設定においても適用できる.本成果は,査読付き国際会議 The 14th Annual International Conference on Combinatorial Optimization and Applications (COCOA2020) にて発表された.また,国際論文誌 Theoretical Computer Science の同会議による特集号に招待され,採録が決定している. (2) 各頂点の避難者数が共通の媒介変数に対する線形関数として付与されるパスネットワークにおいて,総避難時間に基づく最大後悔最小化問題シンク配置問題に対する多項式時間アルゴリズムを開発した.本成果は,査読付き国際会議 The 15th International Conference and Workshops on Algorithms and Computation (WALCOM 2021) にて発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)の成果では,従来の問題に対して,別の問題への非自明な帰着,および発展的なデータ構造の開発を行うことで,アルゴリズムの高速化に成功した.また,(2)の成果では,避難者分布を時刻の関数とするモデルを新たに考え,問題に対する多項式時間アルゴリズムの開発に成功した.いずれの成果も,査読付き国際会議において発表されている.これらは,研究計画に掲げた「最先端理論・技術に基づく高速アルゴリズムの開発」,「実用化を踏まえた問題設定の拡張およびアルゴリズムの開発」という目標を達成する成果であることから,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,国際会議で発表された成果をまとめて,国際論文誌における採録を目指す.さらに,現実的なネットワークにおける施設配置に向けて,扱うことの出来るネットワーククラスの拡張を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって,当初予定した海外出張ができなくなったため,次年度使用額が生じた.次年度も同様となる可能性があるが,代わりに遠隔会議用の各種設備を拡充していくことを考えている.
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