研究実績の概要 |
2021年度では, 課題である非線形半正定値最適化問題(以下, NSDP:Nonlinear SemiDefinite optimization Problemと呼ぶ)とそれに関連する諸問題を数値的に解くアルゴリズムに関して主に以下の二つの研究を行った. 1つ目の研究はNSDPを解くためのアルゴリズムとしてよく知られた内点法における重要概念である中心パスの存在性についての研究である. 内点法は, 1次の最適性条件を満たす点(KKT点)へと収束する中心パスを近似的に辿るアルゴリズムである. したがって, 中心パスの構造と内点法の収束速度には大きな関係がある. これまでのNSDPの中心パスに関連した研究結果は, Yamashita and Yabe (2012) による非退化性, 狭義相補性, 2次の十分条件という3つの仮定の下で, 局所的に存在し, 平滑であることを示した結果のみである. 今挙げた3つの仮定は, KKT点を記述する方程式の正則性を導くための十分条件であり, 結果陰関数定理の適用によって, 中心パスの存在と一意性が保証される. 本研究では, この方程式の正則性を必ずしも意味しない弱い条件の下で中心パスの存在性と唯一性を証明した. 2つ目の研究は, リーマン多様体とよばれる位相空間上における制約付き最適化問題(以下, RNLP)に対して逐次2次最適化法(RSQO)と呼ばれるアルゴリズムを新たに開発し, その収束性を解析した. 正定値錐がリーマン多様体であることから, RNLPはNSDPを部分クラスとして含む. そのため, RSQOはNSDPに対するリーマン幾何学的観点からアプローチした新たな求解手法と考えることができる. さらにシステム同定問題とよばれる制御の実問題はRNLPとして表現できる. 本問題にRSQOを適用し, 実際の有効性を詳しく検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度における研究成果は, 従来よりも弱い条件下でNSDPの中心パスの存在と収束性を示し, リーマン多様体という幾何学的な観点からNSDPをとらえ直すことで新たなアルゴリズムを構築したことである. 双方とも既存の理論研究を大きく前進させるものである. これらは当課題の非線形半正定値最適化(NSDP)の理論的深化という目的に即しており, 課題は順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性として 1. より弱い条件の下での超1次収束性をもつ内点法の開発 2. 非平滑な関数を持つ問題への着手 を挙げたい. まず1であるが, 今回は中心パスの解析を弱い条件下で行った. 今後はその性質をアルゴリズムに活かしていきたい. 具体的には, 同条件下で超1次収束という速い収束性を達成するような内点法アルゴリズムの開発を, 今回明らかにした中心パスの解析を基に行っていくつもりである. 次に2は, 昨年度の今後の研究推進方策でも掲げているが, 非平滑な関数をもつ非線形半正定値最適化問題への着手である. 非平滑な関数はクラスが広く, そのままでは最適性条件などを明らかにすることは難しい. まずは特定の関数のクラスに限定して研究を行っていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は, 国際学会の中止が相次ぎ, 使用予定であった旅費や参加費が未使用になった.2022年度は, 国内学会, 国際学会でも対面での開催が計画されている. 積極的に現地参加し,直接の交流を行うことで研究の推進を図っていくつもりである. そのために旅費のために多く支出するつもりである.
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