研究課題/領域番号 |
20K19750
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福地 一斗 筑波大学, システム情報系, 助教 (30838090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 汎関数推定 / 離散分布 / minimax最適 / 多変数Krawtchouk多項式 |
研究実績の概要 |
本研究では離散分布に関する汎関数の推定問題に関して,minimax最適な推定誤差を求めることができるより汎用的な理論の構築を第1の目標としている.初年度はadditive汎関数というクラスの汎関数推定問題において,汎関数に対して微分可能性などの仮定がなくても適用可能なminimax最適推定誤差を解析する理論の構築を主に進める予定であった.しかしながら,研究開始当初に考えていた解析方針は問題があることが判明したため,解析の方針を一度変更した.これにより,minimax最適推定誤差の下界の解析を行う汎用的な新しい理論の構築には成功したが,推定誤差の上界を解析するための理論構築まではできず,最適性の理論を構築するまで至らなかった. 具体的な下界の結果として,多変数Krawtchouk多項式を元にした多項式近似を用いることによって,有界な汎関数ならば汎用的に適用可能なminimax最適推定誤差の下界を求めることができる理論の構築を行った.この理論は,当初3年目前半までに達成を目指していた形状の汎関数も含む汎用的な汎関数に適用可能な理論であり,既存の研究において課題となっていた微分可能性などの制約を外すことに成功している.この理論は当初1年目に対象とする予定だった汎関数のクラスよりもより一般的なクラスに対して適用可能な理論であるため,下界の解析という面においては一つ壁を突破したと言える. 離散分布上の汎関数推定問題は離散分布上のスカラー値の推定問題ほぼ全てを内包するため,この問題のminimax最適な推定誤差を求めることが可能な理論を構築することは離散分布上の推定問題を理解するためには必要不可欠である.本年度は,これに対して有用である可能性の高い下界の理論の構築を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始当初想定していたminimax最適性の解析方針は,研究を進めた結果,多変数汎関数の場合にその変数間の依存構造を正しく捉えることができず,この方針での解析は難しかった.そこで方針を転換し,上記に記した多変数Krawtchouk多項式を元にした解析方法を新たに考案し,下界を導出する理論の構築を行った.一方で,minimax最適推定誤差の上界を解析するための方法論に関しては遅れており,当初1年目で解析完了を予定していたadditive汎関数に対して微分可能性などの制約を解消した理論の構築はうまく行っていない.従って,自己評価としては進捗状況はやや遅れていると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は現状問題となっているminimax最適誤差の上界の解析を進めていきたいと考えている.上界の解析において,多変数Krawtchouk多項式を元にした推定量の分散の解析が大きな課題になっているが,これに対して具体的な多変数Krawtchouk多項式の構成を元に解析を進めることによって課題を突破していきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はコロナウイルスの影響により学会参加等ができなくなったため、当初予定していた旅費への支出がなくなったことにより助成金の使用ができなかった。今年度はコロナウイルスの状況次第ではあるが、今後も学会参加ができない場合は、研究の調査・論文執筆を行うための環境整備のためにPC周辺機器等に使用する予定である。
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