本研究では,離散分布に対する汎関数推定の問題に対するminimax最適な推定量の解析を目指していた.この問題は,離散分布の確率分布を入力にとりスカラー値を返すような関数の値を,確率分布のパラメータは知らず,確率分布からのサンプルが得られる状況で推定する問題である.minimax最適とは,分布のパラメータが最悪ケースであった場合における推定誤差を全ての推定量の中で最小にすることを指し,簡単に言えば一番良い推定量のことを指す.当初の計画では,関数のクラスを簡単なものからより一般的なものへ拡張しながらこの問題の解析を進める予定であった.しかし,当初想定していたポアソン分布に対する直交多項式による近似を用いた解析では既存の結果を超える結果を求められないことが分かった.そこで,方針を転換して解析を進める間に,その中間的に得られた結果を応用し制約付きの推定問題のminimax最適性の解析に取り組み,いくつかの成果を得た.結果として,公平性と呼ばれる予測によって差別が起きないことを制約に置いたうえで,線形モデルにおける回帰問題のminimax最適性の解析に取り組んだ.この結果は,ワークショップAlgorithmic Fairness through the Lens of Causality and Privacyに採択された.結果はワークショップでの採択ではあるが,機械学習分野の1st tierの国際会議NeurIPSに併設されたワークショップであり,また,査読があり採択率も37/52(71.1%)とある程度選択的な場である.
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