研究課題/領域番号 |
20K19780
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研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
小野 悟 公益財団法人放射線影響研究所, 情報技術部, 部長 (50818309)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電波 / 空中線電力 / ワイヤレスセンシングネットワーク / 野生動物 |
研究実績の概要 |
前年度において猟場における野生動物の生息状況をモニタした.その結果,実験のためのモニタリングに適した環境を選定することができた.今年度は,モニタリングに必要となる実験装置の選定および当該装置を用いた基礎実験を行った.今回の実験は,2.4GHz帯の電波を使用するSONAS株式会社製の無線評価キットUNISONet Classic を用いて行った.基礎的評価を行うために,ベースユニット(シンク)とセンサユニット(ノード)の一対一の組み合わせで,室内における電波の挙動について評価を行った. 電波の挙動を確認するために二つのユニット間を物体が通過した際のRSSI(Recieved Signal Strength Indication)の変動を時系列に解析した.具体的には,ヒト,紙,金属の三つの物体がユニット間を「通過した場合」「止まっていた場合」のそれぞれの状態において,どのような変動が観察できるかを確認した. 実験の結果,ヒトと金属が二つのセンサユニット間を「通過した場合」RSSIの値に有意な変動が観測できることが確認された.この結果から,ヒトなどの動物が無線センサ間において何らかの動作を行うことによって,空中線電力の強度に影響を及ぼすこと,その影響を数値として観察可能であることが示唆された.これらの変動はセンサネットワークを通じてほぼリアルタイムに取得することができる.この結果は情報処理学会第84回全国大会において,共著者として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,無線センサの選定とそのセンサを用いた基礎実験を行った.本研究の目的である野生動物の電波による検出が実践的に可能であることがわかったことは大きな収穫であった.一方でセンサ間の距離に応じて,得られる電波強度が変化することも明らかとなった.具体的には,センサ間の距離の長さに反比例して電波強度の変化が小さくなることから,実用的なセンサ間の距離を考えるうえで,空中線電力の強度や,電波の周波数などのパラメータの最適値を検討しなければならないという課題が残った.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として,以下の二点に関して取り組むことを考えている. 1.室外における無線センサネットワークを通じた空中線電力の状態把握 2.周波数の変動による空中線電力の状態把握 1を行うために,2.4GHz帯の電波を利用するSONAS株式会社製の無線評価キットUNISONet Classicを用いて,初年度に選定したモニタリング環境において実験を行う.主にセンサ間の距離に応じた空中線電力の変化の変遷を検証する. 2を行うために,900MHz帯の電波を利用することができるSONAS株式会社製の無線評価キットUNISONet Classicを調達する.このセンサキットを利用して,今年度行った基礎実験を通じて,ヒトなどの動物が動作を空中線電力に与える影響を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する無線センサは,貸出しの評価キットを利用したため,まだ実機の購入に至っていない.今年度無線センサの購入を行う見込みである.
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