研究課題/領域番号 |
20K19792
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大谷 雅之 近畿大学, 理工学部, 講師 (00782682)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 屋内人物位置推定 / 人感センサ / センサデータ駆動 / 環境刺激データ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来の映像データを用いた群行動モデルに環境刺激データ(照度、人感、二酸化炭素量など)を組み込み、異常行動を起こしやすい魚群などの行動モデルを構築できるように拡張することである。そのため、環境刺激データによって起きる現象のモデル化の検討が必要である。養殖現場で起きる現象とは、魚群への人間の接近や、光量の変化、音量の変化などが予想される。
R3年度は、環境中の複数の人感センサを用いて屋内水槽周囲の人物位置推定を行う手法について、(i)手法の一般化と、(ii)精度向上に取り組むとともに、(iii)実世界に手法を適用した際の影響分析も行なった。 まず、(i)手法の一般化について、提案アルゴリズムは三つのセンサを利用する場合に限られており、パラメータもマグロ稚魚の生育環境に依存した数値になっていたため、センサ個数の上限を無くし、パラメータ値も変更可能にすることで、環境に依存しないアルゴリズムに修正を行なった。またアルゴリズム全体の計算手順も簡略化し、センサ個数が増えた場合でもスケーラブルな手法になるよう調整した。そして、(ii)計算アルゴリズムに用いていたセンサの制約条件について、実世界の「曖昧な」人の位置を考慮に入れておらず、計算精度を落としていたため、これを拡張し、人の位置が多少ずれても大きな影響がないようにアルゴリズムを修正した。さらに、(iii)実環境での有効性検証の前段階として、実データを用いたアルゴリズムの検証を行なった。その結果、センサの影響範囲の個体差が、提案手法の計算精度を低下させる原因となっていることが明らかになった。これらの成果は、国内研究会(2021年度情報処理学会関西支部大会、第49回知能システムシンポジウム)で合計3件発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の群行動モデリング手法を拡張するために必要な、環境刺激データによる事象のモデル化について、環境刺激の中でも特にモデル化が難しい、人感センサデータを用いた人の位置推定のモデル化がほぼ完了している。一方で、残りの主要タスクとして、映像データを用いたモデリング手法への組み込みとその検証が残っており、残りの研究期間でその遂行を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
R3年度に引き続き、7月に近畿大学水産研究所(和歌山県)におけるマグロ稚魚のデータ取得実験を実施する予定である。 特に、カメラデータだけでなく、トラッキングカメラデータの取得も併せて行い、V-SLAMを用いた自己位置推定手法を用いることで、提案手法に実センサデータを用いた場合の評価用のデータとして利用する。また、これまでに得た環境刺激データを用いて、映像データを用いた群行動モデリング手法の拡張を行う。また、昨年度の成果をとりまとめ、11月に横浜で開催される会議WF-IoT2022に投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は新型コロナウイルスの影響が若干緩和され、近畿大学水産研究所へのデータ取得実験は行えたものの、海外で実施される国際会議などへの出張は未だ困難であり、出張費用が大きく余っている状況である。R4年度も同様の状況が考えられるため、これらをデータ分析用の計算機の購入や、実証実験で利用するセンサデバイスなどの開発費用に回していく予定である。
|