研究実績の概要 |
2020年度は, 多変数多項式暗号の安全性に関して以下の研究を行った. (1) Rainbow 暗号に対するRainbow-Band-Separation 攻撃の評価の研究を九州大学の池松泰彦氏, 東京大学の王亜成氏, 高木剛氏, シンシナティ大学のJintai Ding氏と共に行った. また, 研究成果はIACR e-Print Archive, コンピュータセキュリティシンポジウム2020 にて発表された. (2) 多重次数付け可能な多項式系に対する理論的な安全性評価の研究を行った. また, 研究成果はarXiv.org e-Print archive にて発表された. (3) MinRank 問題に対するKipnis-Shamir手法を利用した攻撃の安全性評価に関する研究を九州大学の池松泰彦氏, 東京大学の王亜成氏と共に行った. また, 研究成果はIACR e-Print Archive にて発表された. 研究(1)で取り扱うRainbow暗号は本研究課題の主な対象であり, 米国立標準技術研究所の耐量子計算機暗号標準化プロジェクトの最終候補となっている. 研究(2)ではグレブナー基底アルゴリズムの計算量を見積もるために必要な代数的不変量を調べることで, 多重次数付可能な多項式系に対する評価公式の理論の基礎を構築した. これにより, 研究(1)において, Rainbow-Band-Separation 攻撃から得られた多項式系が多重次数付け可能であることから, 研究(2)で得られた評価公式により攻撃の計算量が改善される. また, 研究(3)においても, Kipnis-Shamir手法を利用した攻撃から多重次数付け可能な多項式を得られることから, 同様に攻撃の計算量を改善することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初2020年度は具体的なRainbow-Band-Separation 攻撃から得られる多項式系のSyzygyを構成することを予定しており, 一般化や応用に関する研究は準備のみに当てる予定であった. しかしながら結果的には, Syzygyの次数の評価の非構成的な手法を与えることができ, 一般化を行うための基盤となる成果も得ることができた.
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