研究課題/領域番号 |
20K19809
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
櫻井 大督 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (50772547)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トポロジカルデータ解析 / レーブ空間 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本年度は,応用分野の調査研究,数学基盤の研究と,情報科学としてのアルゴリズム研究を行っている. 応用としては,まず福島原発事故の線量解析を行う中で,今回着目する,データに含まれるトポロジカルな特徴が,興味対象となる現象とどのように相関しているかについて調査し,その成果を論文化した. 数学基盤の研究が必要になった理由は,可視化や計算幾何分野でトポロジー計算の基礎になっている特異点論を簡素化することでアルゴリズムの正確さを証明しやすくなるからである.特に,情報科学研究者にアルゴリズムを広めるためには,議論が簡潔かつ十分である必要がある.実際に,今回の分野では,離散計算の議論にもかかわらず連続な幾何を持ち出す離れ業が主流であった.それでも,伝統的なスカラ場の研究では問題がなかったが,今回はベクトル場を対象にしたことで,情報科学者の理解の範疇を超える最先端の数学が必要になってしまった.そこで,このような離れ業を回避すべく,離散計算のための特異点論を定式化している. 一方のアルゴリズム研究の方は,レーブ空間と呼ばれる数理構造を計算することにした.この計算には,従来から,実装の難易度が高いという問題があり,未だに応用に耐えるソフトウェアはもちろん手法も出ていなかった.そこで,本年度は特に実装の容易なアルゴリズムを研究した.その過程で,アルゴリズムの正確さを厳密に議論する必要が生じ,前述の数学研究をも行ったのである. また,本研究から発展して,進化計算のベンチマーク問題作成にトポロジカルデータ解析を適用している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は特に,応用の準備として,福島原発の線量データについて,その専門家と様々な変量とトポロジカルな特徴の相関についての調査を行い,論文化した. 現在,本年度の数学・計算の成果については,2つの論文として投稿準備中である. すなわち,本年度に着手した,数学研究とアルゴリズム研究は,それぞれひとつずつの出版物とするが,一方の数学研究は,アルゴリズムの議論のために修正が必要でありながらも,他方のアルゴリズム研究も,数学研究の成果によって正当性の議論の仕方が影響されるという,鶏と卵の関係がある.そのため,双方を同時並行で進めることになり,論文出版までにはその分の時間がかかってしまった.ただし,計算手法の開発というタスクそのものは,計画通りに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,数学基盤と,計算手法の2本の成果の論文化を行う.その上で,特に原発の線量データにこの新手法を適用し,仮説のオントロジーと対応させていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は,コロナ渦のため,出張を2023年度に遅らせていること.2023年度に出張を行うなどして使用する.
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