• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

コンピュータグラフィクス技術を応用した電子ホログラフィの計算高速化

研究課題

研究課題/領域番号 20K19810
研究機関東京都立大学

研究代表者

西辻 崇  東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (70826833)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードホログラフィ / 3次元映像 / 高速計算 / コンピュータグラフィクス
研究実績の概要

生理的に最も自然な3次元像を再生可能な電子ホログラフィにおいて膨大な計算量の処理は実用化に向けた重要課題の1つである.従来の多くの研究が写実的な3次元像の再生を目指していたのに対し,本研究では,3次元像をアウトラインのみで構成される線画オブジェクトに限定することで計算量の大幅削減に成功した.まず,同じ奥行に存在する線画オブジェクトを再生するためのホログラムの計算過程には対称性があり,特に3次元像が直線かつ十分な長さがあれば,計算結果は1次元に圧縮可能な値に収束することを見いだした.そこで,事前計算した1次元状の計算値を低負荷なコンピュータグラフィクスの考え方を用いて展開し,従来のホログラム計算で必要な高負荷な光波動計算を一切用いずに,ホログラムを作成する方式を確立した.さらに,収束した波面を曲線状に合成することで,近似的に曲線の3次元像を投影できることをを発見し,計算方式として確立した.開発した方式は,高負荷な光学的計算をほとんど含まないため,従来の方法に比べて大幅に計算量を削減できる.また,Graphic Processing Unit(GPU)へ実装するための計算手法も開発したことで,GPUによる従来手法の計算に比較して,最大3400倍の高速化に成功した.加えて,開発方式を実装したペンタブレットを用いたCPUのみで動作可能なインタラクティブ3次元像再生システムの開発にも成功し,実用化への可能性を示した.さらに,提案手法の理論的な解析に基づく誤差の小さい高速計算手法も開発し,用途や目的に応じた手法の使い分けを可能にした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では,(1)線のみによって構成される3次元像を再生可能なホログラム再生アルゴリズムの基礎理論構築,(2)描画精度や表現性の向上,(3)計算高速化,(4)インタラクティブシステムの実装の4ステップで研究計画を立案し,2020年度中は(1)(2)の実施を予定していた.実際は(1)~(4)をすべてを一通り実施し,論文を中心とした研究成果を挙げられたため.

今後の研究の推進方策

2020年度は当初計画の研究項目,(1)線のみによって構成される3次元像を再生可能なホログラム再生アルゴリズムの基礎理論構築,(2)描画精度や表現性の向上,(3)計算高速化,(4)インタラクティブシステムの実装,のすべてについて一通りの研究成果を挙げられたが,全要素において改善の余地がある.2021年度は,特に(2)(4)について重点的に研究を進める.(2)については,現状では理論的には幅が無限小の線しか描画できないことに由来して3次元像の表現性が限定的であったため,有限長の幅をもつ線を高速描画できるようにアルゴリズムを改良する.また,現状では再生面に対して同じ奥行きを持つ平面上に分布する線しか描画できないため,奥行き方向に連続的に変化する線の描画を可能にするアルゴリズム改良にも取り組む.これにより,ワイヤフレームで表現する3次元像の高速描画が実現できる.(4)については,本研究の有望な実装先の1つである車載デバイスを想定し,カメラによる物体認識と組み合わせ,動体に対してリアルタイムに追従しする拡張現実用途のプロトタイプの開発を行う.このシステムの実現には,光学系の改良を含み,レンズ等の光学デバイスの購入により将来的な有用性を訴求できるシステムの実現を図る.

次年度使用額が生じた理由

物品費について,新型コロナウィルス感染症の影響で実験計画の一部遅延が生じたため,2020年度中は予定していた光学機器等の購入を見送り,すでに所有している実験系のみで研究を行ったため,次年度使用額が生じた.2021年度は,主に3次元像の光学再生像の画質向上を目的とした光学機器(レンズ等)の購入による支出を予定している.旅費について,新型コロナウィルス感染症の流行により,出張等の一切が取りやめになり,旅費の支出が生じなかったため,次年度使用額が生じた.2021年度中も劇的な状況の改善は見込めないため,旅費として計上していた予算は物品費等に振り替えて使用する.その他経費は論文掲載費用を中心に予算計上していたが,投稿先論文がすべて所属大学の論文投稿費支援事業の対象となるQ1ジャーナルであったことにより,2020年度の支出は生じなかった.2021年度は,対象外となる論文誌への投稿も予定しているため支出が生じる予定である.余剰が生じた場合は物品費に充当する.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Vrije Universiteit Brussel/IMEC(ベルギー)

    • 国名
      ベルギー
    • 外国機関名
      Vrije Universiteit Brussel/IMEC
  • [雑誌論文] An interactive holographic projection system that uses a hand-drawn interface with a consumer CPU2021

    • 著者名/発表者名
      Nishitsuji Takashi、Kakue Takashi、Blinder David、Shimobaba Tomoyoshi、Ito Tomoyoshi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 147

    • DOI

      10.1038/s41598-020-78902-1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Fast calculation of computer-generated hologram of line-drawn objects without FFT2020

    • 著者名/発表者名
      Nishitsuji Takashi、Shimobaba Tomoyoshi、Kakue Takashi、Ito Tomoyoshi
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 28 ページ: 15907~15907

    • DOI

      10.1364/OE.389778

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Analytic computation of line-drawn objects in computer generated holography2020

    • 著者名/発表者名
      Blinder David、Nishitsuji Takashi、Kakue Takashi、Shimobaba Tomoyoshi、Ito Tomoyoshi、Schelkens Peter
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 28 ページ: 31226~31226

    • DOI

      10.1364/OE.405179

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 電子ホログラフィ方式の線画3D 表示におけるGPU 実装方式2021

    • 著者名/発表者名
      西辻崇,David Blinder, 角江崇,下馬場朋禄,伊藤智義
    • 学会等名
      第83回 情報処理学会全国大会
  • [学会発表] RGB-Dカメラを用いた電子ホログラフィによる追従可能な 3 次元映像投影システムの提案2021

    • 著者名/発表者名
      林明日未,西辻崇,朝香卓也
    • 学会等名
      2021年電子情報通信学会全国大会
  • [学会発表] 深度情報を用いた電子ホログラフィによる追従可能な 3 次元映像投影システムの提案2021

    • 著者名/発表者名
      林明日未,西辻崇,朝香卓也
    • 学会等名
      第15回関東学生研究論文講演会
  • [学会発表] アプリケーションや通信を考慮した電子ホログラフィの高速計算技術2020

    • 著者名/発表者名
      西辻崇
    • 学会等名
      2020年度7月 電子情報通信学会 コミュニケーションクオリティ研究会
    • 招待講演
  • [備考] 西辻崇研究紹介ページ

    • URL

      https://sites.google.com/view/nishitsuji/research?authuser=0

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi