電子ホログラフィ方式の3次元映像システムの実用化に向け,映像の電子的な記録媒体である計算機合成ホログラム(CGH: Computer-Generated Hologram)の高速計算手法として本研究課題で前年度に開発した線・アウトラインのみを3次元的に表示可能な計算手法CG-line法の改良,拡張手法の開発を大きく2つのアプローチで行った. 1つ目は,奥行方向に連続的に変化する計算手法の開発である.ベルギー・ブリュッセル自由大学との共同研究により開発した.当初のCG-line法では線が同じ奥行きに存在しなければならない制約があったが,開発手法により,ワイヤフレームアートのような,柔軟な表現性を持つ3次元像の再生が可能になった.GPU(Graphic Processing Unit)への実装に適した手法であるため,当初のCG-line法と同等程度の高速性があり,実用的な速度での計算ができる. 2つ目は,画質改善手法を開発である.CG-line法は近似的にCGHを計算するため,いくつかの画質劣化が生じることが解っており,中でも線の形状によって線の濃さ(再生時の光の強さ)が意図せず不均衡になる現象が解決すべき重要課題として解っていた.また,強度の不均衡は線の曲率に従って発生・変化することが解っている.他方,位相変調により3次元映像を再生する位相ホログラム(キノフォーム)について,位相に意図的に誤差を付与することによって,再生時の強度を制御可能なことを発見した.そこで,曲率に応じて,位相誤差を重畳することで,不均衡を補正する手法を開発した.補正精度には課題が残るものの,一定の画質改善効果を実現した.
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