研究課題/領域番号 |
20K19812
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新宅 勇一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 破壊力学 / 計算力学 / 損傷力学 / き裂進展解析 / 安定化有限要素 / 有限要素法 / Petrov-Galerkin法 |
研究実績の概要 |
本年度は、埋込型損傷構成則を非局所アプローチの枠組みで再定式化したうえで、き裂進展問題におけるメッシュ分割の方向依存性を回避するためにPetrov-Galerkin法を提案した。加えて、有限要素法の高次形であるIsogeometric解析のプログラムを開発し、両者を組み合わせて解析可能とした。 具体的には、これまでに提案してきた局所理論に基づく結合力埋込型損傷構成則を非局所アプローチへ拡張するために、応力と結合力の釣り合い式の弱定式化を導入した。また、形状関数のC0連続性に起因するメッシュ分割の方向依存性を回避するために、応力と結合力の釣り合い式の重み関数に対してPetrov-Galerkin法を採用した。すなわち、有限要素間でのき裂面の連続性を考慮するために、重み関数を従来の試行関数の一階微分の関数から、見かけ上のひずみを差分近似した試行関数と同次の関数へとき裂進展に伴って変化させた。これにより、従来の手法ではメッシュの分割に依存してき裂が進展していた問題を解決し、適切な解析結果を得られるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、材料の剛性が低下する破壊の初期段階と材料が軟化する最終段階を繋ぎ合わせるために、その中間段階に位置する非局所アプローチに基づく手法を開発した。これにより、破壊の初期段階を表現するための従来の局所理論に基づく埋込型損傷構成則で発生するメッシュ分割依存性の問題を解決可能となった。この問題によって、従来の埋込型損傷構成則による弱不連続解析から、結合力モデルと有限被覆法を用いた強不連続解析へ移行した際に、不自然な応力変化が発生し、数値的な振動が起きていた。そのため、破壊の初期段階と最終段階を矛盾なく移行可能なシームレス解析手法の基盤となる技術が開発できたと考えている。 また、COVID-19の影響を鑑みて当初予定していた実験を次年度に変更し、次年度予定していたIsogeometric解析の開発を前倒したため、計画全体に大きな影響はないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した手法は、数値的に不安定な面もあるため、今回の定式化を手掛かりとして再度数理モデルを検討したいと考えている。また、金属材料などの一般的な材料の変形を扱えるように対応するために、弾塑性モデルへの拡張を予定している。併せて、本年度予定していた実験を行い、開発した数値解析手法の結果と比較して、妥当性を検証したい。さらに、当初計画の通り、並列計算を導入することで、研究をさらに加速させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による緊急事態宣言などの状況を鑑みて、本年度予定していた機材の調達を延期し、基礎的な理論の構築と数値解析手法の開発に注力したため。
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