航空機、自動車、建屋などに代表される構造物の構造安全性を評価するためのシミュレーション手法として、有限要素法による数値解析が利用される。解析対象の支配方程式を離散化すると、最終的に有限要素法で解くべき連立一次方程式が得られるが、問題によっては大規模問題や悪条件問題、メッシュの非整合などが原因となって、しばしば連立一次方程式が解きにくい状況に直面する。本研究では、解くべき連立一次方程式に以下の条件:(A) 問題自由度が大規模、(B) 非線形動解析、(C) 解析対象に由来する悪条件問題(例:薄板構造、メッシュサイズ差)、(D) 複数領域が存在し領域間のメッシュ界面が非整合(例:接触解析、重合メッシュ解析)を設定し、この条件下において有用な有限要素法のための連立一次方程式解法を開発する。 本研究では線形ソルバとして並列計算効率の高い反復法を採用する。反復法ソルバを用いる場合、解くべき問題の条件数を削減し反復法ソルバの収束性を改善する、反復法前処理の利用が必須となる。2022 年度は、提示した条件下において有用な連立一次方程式解法の開発を目的として、高い前処理性能を得るための固有モード情報を援用した大域的前処理を開発した。 固有モード情報を援用した大域的前処理に対し、並列計算が可能なプログラム実装を実施し、簡易形状モデルおよび実形状モデルを用いた適用可能性評価により、条件数が大きな問題に対して提案手法の有効性を示した。
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