研究課題/領域番号 |
20K19817
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田中 緑 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 助教 (40780979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 質感 / 質感知覚 / 質感計測 / 光沢感 / 光沢度 / 透明感 / 心理物理実験 |
研究実績の概要 |
2020年度は、研究計画に基づいて、①特定照明下における視感評価環境の構築、および②平面物体の質感計測環境の構築の研究に取り組んだ。 ①の研究成果:A.照明条件がもたらす質感知覚への影響を調査するため、物理的な光沢度の測定条件を規定したISO2813の幾何条件に基づいて、対象物体をスポット照明によって同一の明るさで照明できる評価環境を構築した。平滑面や梨地面など、表面形状が異なる樹脂や金属メッキ等の平面サンプルを対象物体として、構築した視感評価環境において光沢感の視感評価実験を実施した。10名の被験者に対する実験の結果、同じサンプルでも幾何条件によって光沢感知覚が異なる結果が得られた。B.透過率が異なる実物サンプルを対象とした透明感の視感評価実験に向けて、標準光源D65相当の拡散照明を安定して出力できる照明環境を構築した。 ②の研究成果:①-Aで構築した視感評価環境において光沢感解析用の質感計測を遂行した。計測においては、平面物体表面の光学的な物理量を、精密光学機器やカメラで獲得し、物理特徴量を算出した。具体的には、従来の標準規格で規定された光沢度に加えて、ヘイズや写像性、テクスチャ特徴量を解析によって獲得した。①-Bの視感評価環境において透明感解析用の画像計測を遂行し、先行研究にて有力な特徴量とされる尖度や歪度などの物理特徴量を算出したところ、透明物体の背景や陰影を考慮した照明環境の構築が重要であるとの知見が得られた。 ①-Aと②-Aの研究成果を基に、光沢に関する物理量・光沢度等と、知覚量・光沢感の関係を解析し、重回帰分析によって物理量から知覚量を推定する光沢感モデルを導出した。光沢度以外の物理特徴量を加味することで、関連研究のモデルよりも、高精度な推定結果が得られた。今後は、対象物体の拡大や照明条件を再考し、透明感など他の質感について調査を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、①、②の両方において拡散照明下での視感評価実験および計測も実施予定であった。環境構築は完了したものの、COVID-19の影響により、被験者実験や計測実験を含む研究活動の制限が設けられ、実験の遂行に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCOVID-19によって対面での被験者実験・計測実験が制限されるため、前年度のデータをもとに解析を継続する。また、他の質感調査へと展開するために、新たなサンプルの導入を検討する。研究全体の遂行においては世情を鑑みつつ、計画にしたがって、③平面物体の質感定量化システムの開発、④一般照明を考慮した視感評価環境の構築に取り組む。ただし、被験者実験など、大学の実験室環境における研究活動の制限が長引く場合には、対面での実験を必要としない計測実験に注力した研究計画に変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響によって、当初計画していた旅費と被験者謝金に関する未使用額が生じた。次年度では、世情を鑑みながら研究計画に基づいて学会参加と被験者実験を遂行し、旅費と被験者謝金を計上する。ただし状況によっては、物品費やその他の経費など、他の経費に再配分するように変更する。
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