研究課題/領域番号 |
20K19820
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川節 拓実 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70868330)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 触覚センサ / ソフトアクチュエータ / 液体金属 / イオン液体 / ソフトセンサー |
研究実績の概要 |
本研究課題では,やわらかさの異なるソフトアクチュエータと触覚センサを,両者の特性を損なわないように融合する手法の実現を目指し,2020年度は特にセンサ開発を重点的に進めてきた.柔軟触覚センサを作成する手法の探索,センサに用いる材料の探索,センサから得られた触覚情報の処理,といった基本的な技術開発を進めることができた. (1)提案する液体金属を用いた触覚センサの構造変化に対するセンサ応答の変化を網羅的に調査しセンサの設計指針を明らかにするため,多種多様な構造を持ったセンサを作る必要がある.このセンサ作成を加速させるため,提案センサを容易に作成可能とする手法を考案した.この作成手法を用いることで,提案センサをより少ないコストで素早く試作することが可能となった.いくつかの結果についてIEEE RA-Letters,IEEE RoboSoft 2020,IEEE ICRA 2020などで報告を行った. (2)研究課題を実施する中で,液体金属より毒性が低く低コストで扱いやすい導電体の一種であるイオン液体を用いて柔軟な触覚センサを構築する手法を考案し,当初目的を別の材料を用いて達成できる可能性が生まれた.液体金属より流動性の高いイオン液体の特性を活用することで,当初開発を予定していた触覚センサをより簡便に構築できる手法を考案した.この手法の一部に関してもロボティクス・メカトロニクス講演会2021などで報告予定である. (3)触覚情報を処理し実応用に結びつけるため,触覚センサから得られた時系列データをエコーステートネットワークに入力し,接触物体の識別を試みた.アクチュエータの駆動信号とセンサ情報を一つの時系列信号として扱う識別手法を考案し,2021年度のセンサ・アクチュエータ融合に向けた議論を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り,液体金属を用いた柔軟触覚センサを開発し,押込や曲げに対するセンサの基礎応答特性の測定,センサ作成手法の単純化,いくつかのセンサ構造の試作,論文や国際会議発表などを実施し,センサ開発における目標をおおむね達成している.加えて,センサに用いる材料にイオン液体を新しく使うアプローチを考案し,試作したセンサで押込に対する基礎応答特性の測定,作成手法の体系化,論文発表の準備を進めており,当初想定していた計画を超えた成果も一部生まれている.2021年度のセンサ・アクチュエータ融合に向けて,ソフトアクチュエータの試作やロボットハンドの試作も一部実施し,当初計画取り研究が進行するよう準備を進めている.加えて,考案した触覚センサの特許出願の可能性についても検討を進めている.触覚情報処理の基礎検討も進め,センサ・アクチュエータ融合を見越してセンサ情報のみでなくアクチュエータの動き,つまりアクションの情報を同時に用いた時系列データ処理を進めている.これらのセンサ応用研究も進めることで,センサ・アクチュエータのための議論を深めた.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は2020年度に開発・考案したセンサの作成手法を基礎に,当初計画に記載した通りソフトアクチュエータと触覚センサの融合に取り組む.当初計画では液体金属を用いた柔軟触覚センサとの融合を予定していたが,これに加えて本研究課題の中で新しく考案したイオン液体と流路を用いた柔軟触覚センサとソフトアクチュエータの融合も試みる.構築した触覚センサ付きソフトアクチュエータを用いて物体把持実験を実施し, 2020年度に取り組んだ時系列データ処理手法を用いて把持した物体の識別等に取り組む.これらの研究を通じて,ソフトアクチュエータに触覚センサを融合する必要性を議論する.
|