研究課題/領域番号 |
20K19826
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
櫻庭 彬 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20650766)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ITS |
研究実績の概要 |
2020年度は,本研究課題の提案システムのうち,無線通信の性能評価と,センサユニットによる舗装上のラフネス評価および自動運転車によるセンシング評価試験を実施した. 無線LAN規格Wi-Fi 6を使用した無線通信ユニットの車路間通信による性能評価試験は,路側通信システムを公道上の路側部に建植して行った. 920 MHz帯LPWA通信無線規格では,最大半径1.3 kmの範囲で走行間通信が可能である評価が得られた一方で,配送可能なネットワーク性能は想定する車載センサデータの約300秒程度に相当するにとどまった.Wi-Fi 6による車路間通信では,LPWAと比較して最大で約27倍のデータ配送が可能であった一方で,路側通信ユニットが街路樹内に設置されたため,植生の成長によって発生したと推測されるデータ転送量の低下を観測した.走行間の車両相互の車車間通信では,Wi-Fi 6は最大半径300 mの通信が可能であった.通信性能は道路上の他の車両の走行による影響や,道路の線形,見通しに大きく依存することが確認された.また積雪量推定指標の一つとなるラフネス値の評価を行った.評価試験では,処理の高リアルタイム性が確認され,算出されるラフネス値は既存センシングシステムで取得する定性的な路面の気象状況の積雪量を定量的に評価可能な性能が示唆された.一方で,加減速等の車両操縦の影響が評価値にも影響する結果を得た. また,秋田県北秋田郡上小阿仁村で運用される自動運転システムにおいて車載センシングシステムを搭載した実証試験を行った.この実証試験では,自動運転車にセンサを搭載した場合には,正確な操舵制御と定速走行によって粒度の高いセンサデータの取得が可能であることが示唆された. 本研究課題の成果発表においては上記試験結果を踏まえ,研究代表者が第一著者のものに限定すると国際会議4件ならびに国内口頭発表2件を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗は,やや遅延している状況にある. 申請者は,本研究課題採択の前後に雇用関係と収入を失い,一時規定上は学外者とされたこともあり,新型コロナウイルス感染症への対応として大学構内への立入を自粛したほか,また自らの生活維持のために研究に専念することができなかった.また,2020年10月ごろまで所属機関内での研究費執行に関する枠組みが整備されていなかったほか,自ら研究費を執行する権限が付与されなかったこともあり,機器類の調達を行うことができなかった.このため,既存の設備等を活用した上で,収入の見込みが確保された同年11月以降になり研究に本格的な着手を行った.研究計画において,2021年度に実施する予定であった通信評価試験を前倒しで行い,本研究課題で調達予定としていた機材と同等構成のセンサおよび通信システムを構築して評価を実施した.このうち,特に通信システムと,センサデータの可視化GISのプロトタイプを実装し,ハンズオンによる評価を実施している.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は,2021年4月をもって研究機関を異動し研究費執行権限を得た. 2021年度は主として測距センサによるデータ取得手段やデータ管理手法について設計および開発を進めるとともに,非積雪時の基準データの構築を試みる. 本研究課題における解決手法では,積雪の観測ポイントと車両の位置を高い精度でリンクすることを目的とした高精度測位の実現が必要となる.そこで,既存システムで使用されているGPSをベースとしたGNSSに加えて,Real-time Kinematic(RTK)による高精度測位の実現手法について予備調査を行った.当該調査では,自営系のRTK基地局/移動局を構築することを当初計画としていたが,調整のために頻繁な実験地域との往来による調整作業が困難と認められるため,商用RTKサービスの利用を検討している. なお,本年度8月ごろを起点として,非積雪時を含んだ積雪寒冷地域におけるフィールド試験を実施する方針としており,COVID-19の感染拡大状況や,冬期間の積雪状況に応じた柔軟な試験が行えるよう調整を進める,
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は,本研究課題採択の前後に雇用関係と収入を喪失した上,一時規定上は学外者とされたこともあり,新型コロナウイルス感染症への対応として大学構内への立入を控えた時期があり,本研究課題を含めたあらゆる研究活動が停滞した.また,2020年10月ごろまで所属機関内での研究費執行に関する枠組みが整備されていなかったほか,自ら研究費を執行する権限が付与されなかったことに加え,資器材の調達を控えるよう申し出が研究現場で発生したため,需品の調達購入を行うことができなかった.このため,2020年度の活動では,既存の資器材を活用して評価試験を行うことにとどまったことが,次年度使用額の発生の主要な要因である. 申請者は,2021年度から研究機関を異動し安定財源による雇用形態となり,予算の執行権限も付与されていることから,この問題は解消されるものと思われる.よって2021年度は車載センサ類等の資器材類を調達の上,積雪寒冷地域におけるフィールド試験を異なる季節に実施する計画を合計6回を目途に実施する方針とした.
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