研究課題/領域番号 |
20K19826
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
櫻庭 彬 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部情報システム技術部IoT技術グループ, 副主任研究員 (20650766)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高度交通情報システム / センシング / LiDAR |
研究実績の概要 |
実施計画に基づき,車上センサシステムの開発を実施した.本研究の提案手法では,自動車上に搭載した広角2次元測距センサから取得する.このためセンサと路面間の距離および反射信号強度データと,高精度に自車位置を測位可能なReal-time Kinematic(RTK)による車両座標測位方法のリンクについて実装検討を行った.また,道路上の積雪量を推定するための手法として,冬季以外の非積雪時に,基準データとして冬季に参照するCriteria Road Profile (CriRo) 構築について検討した.一方冬季においては,積雪のある道路上を走行したセンサシステム搭載車両は,同様にセンサ-路面間距離を測定しながら走行すると共に,測距地点の緯度経度座標をリンクさせたデータと,基準データとの距離の差分を演算して,差分距離を積雪量としてみなす.この結果を,Snow-accumulation Database (SnAD)と呼ぶ積雪量データベースへ保存する処理を検討し,実装対象とした. 主要な業績として,2件の国際会議での報告を行った.測距データと測位した緯度経度座標をリンクする処理とそのアルゴリズムに関しては,国際会議に1件投稿を実施した.国際会議では,他車とのデータ交換方法の必要性や,その関連技術に関して,分担者となっている他研究課題「IoTセンサ群を利用した次世代広域道路状況情報プラットフォームに関する研究(科研費基盤研究(C), JP20K11773)」に関連して,他車および路側通信インフラとの通信設計に必要な要素について,大容量の次世代無線規格を活用することが必要などの有用な議論を行った.また,車路間通信要素についても検討を行い,MQTTをベースとしたデータ配送手法についても評価を行い,国際会議発表1件でその報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19パンデミックの長期化により,測距センサそのものの調達および実機でのデータ取得が2022年4月末ごろまで大きく遅延した状況にある.現在の進捗状況としては,車上センサシステムのソフトウェア開発は,データ取得モジュールと,生センサデータのデータ記録モジュールに関しては実装が完了している.現在は非積雪時に記録する基準データの記録・構築部分に関しての検討実装を測距センサ実機を用いて行っている段階である. 車上システムと測距センサを接続する電源・信号系ケーブルハーネスに関しても,コネクタ類の国際的な在庫不足により,納期に見通しが立っておらず,実験計画に今後も影響が出るものと想定される. フィールド実験に関しては,研究分担者となっている他研究課題「IoTセンサ群を利用した次世代広域道路状況情報プラットフォームに関する研究(科研費基盤研究(C), JP20K11773)」と関連づけて,前所属機関が所有する実験用自動車の使用について調整を進めていたところ,前所属機関から当該実験用自動車の使用およびリース等によって調達した自動車の留置許可を拒否されている状況にあるため,実環境におけるフィールド実験を行うための方策について再度新たに検討を行っている状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
非積雪時に構築する基準データの構築を目的とした実自動車を使用したフィールド実験を,遅くとも2022年9月末を目処とした計画を行っている.このため.車上センサシステムの開発完了を目指して作業中である.基準データは複数回の非積雪時の公道走行により構築を行い,冬期間の実データ取得に備えるものとする. 現在の想定では実験フィールドを岩手県内と想定しているため,積雪が観測される12月中旬ごろに積雪時の実データを取得するとともに,20回程度,総延長800km程度の実験走行について計画を進めている. また,研究成果として,今年度は積雪データが取得でき次第,国際会議または国内のITS研究会に実際の積雪状況との比較を行いながら議論するとともに,結果を論文投稿により行い,広く研究者と議論する方針としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見積額より車上測距センサ(北陽電機 UXM-30LAH-EWA)の調達価格が安価であったことが挙げられる.第二に,COVID-19感染拡大により国際会議がすべてオンライン開催となったことや,緊急事態宣言の発出により実験フィールドとして想定していた岩手県を含む,本研究課題に関係した出張をともなう打ち合わせおよび作業が一切行えなかったため,旅費の支出が0となったことが挙げられる.今年度は,本報告現在において当該地域への出張規制が求められていないため,当初計画に基づいた現地作業による旅費支出およびリアル開催による国際会議参加を予定している.また,実フィールドによる実験では,業務委託等による運転者を確保し,800km程度の走行実験を計画している.
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