研究課題/領域番号 |
20K19840
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西山 勇毅 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80816687)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 音声式適時ESM / 内在運動情報 / 運動学習促進 / コンテキスト認識 / 音声入力 |
研究実績の概要 |
本研究は、「人の内在的な運動感覚を低負荷に収集・還元できる基盤を構築し、客観的な情報だけでなく内在的な感覚情報を用いた運動学習環境を実現すること」を目的としている。反復練習における、内在的な運動感覚の継続的な言語化は、運動の熟達化を促進させることが明らかになっている。一方、モーションセンサなどを用いた客観的な運動計測と異なり、人は内在的な運動感覚を長時間記憶することは難しく、ノートなど既存の外部記憶装置への記録は入力負荷が高く、継続的な記録は困難である。その為、継続的な内在運動感覚の記録には、記録のための入力負荷を抑え、その場ですぐに記録できる仕組みが必要がある。そこで本研究では、(A)自己内省における適切な言語化手法・コンテキストに応じた割り込みタイミング・起動手法の解明、(B)音声認識を用いた内在運動感覚の言語化が自己内省促進に与える影響の解明と、(C)実証評価アプリケーションによる内在運動感覚検知・還元基盤の有効性の解明を行う。これらの実現に向けて、本研究では、コンテキスト認識技術と音声入力技術を用いた内在運動感覚の記録・還元基盤を実現し、それらを用いた実験を行う。 本年度は、ユーザのコンテキストを起点とした割り込みと音声入力基盤の実現に向けて、モバイル・ウェアラブルデバイスを用いたコンテキスト認識基盤の実装と評価、本研究で利用する機材の選定、およびそれらを用いたプロトタイプシステムの実装を行った。コンテキスト認識基盤としてこれまで継続的に開発してきたAWARWフレームワークを拡張し、腕時計型センサデバイスとイヤホン型センサデバイスからデータ収集可能にし、一部をオープンソースのライブラリとして公開した。また、AWAREフレームワークの実環境での性能評価を実施し、AWAREフレームワークを用いることで、予想されたデータ量の94%を収集可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行により、協力予定のスポーツ団体の活動が制限され、当初計画していた予備実験の実施が延期となるなど、全般的に計画に遅延が生じている。今年度は、ユーザを伴う実験は実施せず、「適切な割り込みのタイミング検知ためのコンテキスト認識基盤の開発」と「内在運動感覚の入力支援システムの開発」に注力した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでに実装した「コンテキスト認識基盤」と「内在運動感覚の入力支援システム」を統合し、「コンテキストに応じた内在運動感覚の記録・還元システム(MiQ)」を実装する。さらに、実装システムを用いた実証実験を行い、提案システムが運動学習に与える効果について検証する。 協力予定のスポーツ団体は、現在活動を再開しており、実験の準備を進めている。しかし、COVID-19の流行状況によっては、実験の中止や延期を行う必要があるため、予定を前倒し7月頃に実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行により、今年度中に実施を予定していた複数ユーザを対象としたインタビューや実験が次年度に延期とになった。実証実験では、複数ユーザに機材を配布し実験を行う予定にしており、実験機材の購入費や実験参加者への謝金、システムの運用費を次年度に繰越することにした。また、参加を予定していた国内・国際会議がオンライン開催になったことで、旅費や学会参加費用が発生しなかった。次年度に繰越した資金は、今年度予定していた、実験の実施費用として利用する。具体的には、ウェアラブル・モバイルデバイス等の物品購入費(150万円)と、実験参加者への謝金(20万円)、システムの開発・運用費(100万円)として利用する。その他(出張費・論文掲載関係費等)として50万円を計上している。
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