研究課題
本研究は、低負荷に人の主観的な感覚情報を収集・還元できる基盤の構築を目的としている。人の主観的な感覚情報は、客観的な情報に比べ、記録負荷が大きいため、継続的な記録が困難である。そこで、「その場」で感覚を言語化し、それを音声認識により文字化することで低負荷に、主観的な運動情報を収集する。最終年度では、主に以下の(1)-(3)を実施した。(1)予備調査として、大学運動部の現役選手(116名)を対象にアンケート調査を実施した。その結果、94.81%が過去に運動感覚の記録経験があることが明らかになった。さらに記録内容としては、68%が「主観的な運動感覚(コツなど)」を記録しており、これは「練習内容(75%)」に次いで多い。また、記録頻度は、「1日1回」が最も多く52%となったが、記録時の負荷が低い場合は、より短い頻度での記録(動作やセット、練習メニューごと)が最も高くなった(55.28%)。これらは、主観的な感覚記録の記録負荷が高いため、記録が行えていないことを示唆している。(2)評価実験用システムとしてMiQを実装した。MiQは、スマートフォン・ウェアラブルデバイス上のセンサ群を用いたコンテキスト認識と、コンテキストに合わせた音声入力・フィードバックを実施できるシステムである。コンテキスト認識機構では、自転車運転者の片手運転・不注意動作、歩行者の紫外線被曝状態、子育て行動、会話イベント、スポーツの反復練習動作を取得できる。本機構の一部は、コロナ禍における感染症予防行動の記録や運動量の分析にも活用され、コロナ禍における大学生の運動量が大幅に低下している可能性を明らかにした。(3)MiQの有効性の評価として、野球の反復練習(バットスイング)を対象に評価実験を現役の大学野球部8名に行った。実験結果より、全ての実験参加者の主観情報の記録量が増加し、入力負荷も低下したことが明らかになった。
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