研究課題/領域番号 |
20K19850
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
来間 千晶 広島大学, デジタルものづくり教育研究センター, 共同研究講座助教 (50846962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自我消耗 / Self-control / 運動制御 / 空気圧ゲル人工筋 / 運動アシスト / 身体運動心理学 |
研究実績の概要 |
昨今では運動支援デバイスのアシストやトレーニングによる身体的スキルや健康の増進が目指される.運動支援デバイスを活用しながら運動を継続するには,その運動目標に合わせて自身の思考・感情・行為等を適切に調整するというself-controlという心理的活動が必要となる.しかし,self-control(SC)に必要な心的資源を消耗すると,その後SCを継続できなくなる(自我消耗)ことが起こり,運動に真摯に取り組まなくなったり他のデバイスに買い替えたりと,運動支援デバイスの効果が十分に表れない場合もある. そこで本研究では外力によって運動が制御される中で生じる自我消耗とその後のSCへの影響を明らかにすることを目的とした.本研究では片手上腕でのダンベルカールを運動課題としたため,肘関節の屈曲/伸展運動を制御するようデザインしたアシスト装置を実験参加者の片腕に装着した.PGMの収縮制御にはArduinoを用い,電磁弁を介した空気圧制御により収縮強度やタイミングの調整を可能とした.作成した実験器具により,運動支援デバイスによる自我消耗の生起を検証することが可能であった. また,SCへの影響を検討するにあたり,本研究では異なる形態のSC課題の成績を確認することとした.課題設定はSC関連の先行研究を参考にし,当該年度は認知的SC課題としてアナグラム課題(文字を並べ替えて単語を完成)を採用した実験を行なった.課題後の実験参加者のインタビューより,PGMの作動によって動作のSCの変化を感じる旨の発言があった一方で,アナグラム課題時の認知のSCについては顕著な違いが見られない様子が見受けられた. 今後実施する実験では,感情的SC課題として動画視聴時の感情反応抑制課題を採用する.感情反応評価方法として,感情認識ソフトウェアAffdex SDKを導入し,動作確認を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度の当初の研究計画として,研究2(PGM収縮強度による影響)の実験2(感情的SC課題での検討)および実験3(運動的SC課題での検討)の実施を予定としていた.しかし,本研究は人を対象とした実験研究であったため,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け,前年度に引き続き実験参加者の応募数および実験実施の進捗が著しく低下した.具体的には,新型コロナウイルス感染症対策として自治体および所属先からの外出・移動自粛の要請や個人の感染対策意識の向上により実験参加者の来校が制限される様子が見られた.また,研究実施場所の実験棟の改装工事が行われたため,止む無く一定期間の実験中断をせざるを得なかった.そのような状況下にて,研究1(PGMによる肘関節運動のアシスト様式による影響)の実験1(認知的SC課題での検討)を行ない,実験プロトコルの見直しや空気圧ゲル人工筋のアシスト装置のアップグレードを行なってきた. その他,人の心理状態評価や運動制御に関する情報収集や,学術領域の関心のトレンドを把握するため,日本スポーツ心理学会第48回大会,ISSP2021 15th WORLD CONGRESS,日本心理学会第85回大会などに出席した.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大状況および感染拡大防止のための官民組織の要請事項の影響を考慮しながら,研究1の実験進捗を早急に進めていく.22年度からは実験2(感情SC課題での検討)と3(運動SC課題での検討)を完了させる予定である.また,研究1の結果・考察と並行し,研究2(PGMの収縮強度による影響)の実施に向けて空気圧ゲル人工筋のアシスト装置の改良にも取り組む.さらに,各研究の実施と並行し,運動科学,実験心理学,ヒューマンインターフェースなどの関連領域での学会発表や学術誌投稿などの成果公表を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行状況を鑑み,国内外の学会参加に伴う移動を一切行わなかったため.また,同様の背景から,実験実施に伴う実験参加謝礼が発生しなかったため. 次年度使用計画として,研究備品の増設(主に感染症対策備品や,データ収集機器およびアプリケーションの導入)や国内外の学会参加機会の追加を検討している.
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