研究課題/領域番号 |
20K19854
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
叶賀 卓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (40803903)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 筋電位 / 転移学習 / ヒューマンインタフェース |
研究実績の概要 |
本研究では、個人間・個人内のばらつきの大きいデータの分布を、短いキャリブレーション時間で統計的に補正する転移学習法の提案および応用を目的としている。この目的に対して個人差が大きいことで知られている筋電位データを用いている。具体的には、ターゲットの少数データとソースデータの類似度計算、ソース選択、そしてドメイン適応理論を構築する。続けて、筋電位を用いた上腕動作フレームワークへ応用する。 本年度は、ターゲットの少数データとソースデータの類似度計算を行う際に、ターゲットのデータにラベルがついている場合とついていない場合、それぞれのケースを考え、ソース選択とドメイン適用理論をセットとしたフレームワークを2種類提案した。 ターゲットの少数データ(キャリブレーションデータ)にラベルがついている場合は、ソースを選択せず、すべてのソースを用いてアンサンブル処理をすると性能が高いことを明らかとし、さらに半教師あり学習と組み合わせてラベルなしのテストデータ情報を反映できることも明らかとした。この結果は現在国際論文誌に投稿中である。 また、ラベルがついていない場合は、複数の距離指標を用いてターゲットデータとソースデータの距離が近いものを選択することで、キャリブレーションデータにラベルがついていない場合も転移学習が可能となるフレームワークを提案した。ただし、こちらに関してはラベルありの状態と比べると性能が高くなく、今後さらなる改良が必要である。こちらについても国際論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していたターゲットの少数データとソースデータの類似度計算、ソース選択、そしてドメイン適応理論をまとめたフレームワークの構築は予定通りに完了した。 一方、研究計画当初は想定していなかったキャリブレーションデータにラベルがついていない状態、というのが短いキャリブレーション時間を「容易に」行う上で非常に重要であるということに本年度の研究遂行中に気づき、もともとのラベル付きキャリブレーションデータを対象とした研究目的と並行して行うこととなった。より「ユーザフレンドリーなヒューマンインタフェース」を目指すのであれば、ターゲットユーザは動きを指定されず、自由にキャリブレーションを行うことが望ましい。つまり、計測されたラベルなしデータから転移学習を行うべきである。しかし、当初の予定を優先し、筋電位を用いた上腕動作識別フレームワークへの応用は、まずはキャリブレーションデータにラベルがついている状態で行い、余裕があればラベルなしキャリブレーションデータに対しても行えるようにする。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、今後は筋電位を用いた上腕動作フレームワークへの応用を実施する。 これに対し、筋電位が入力されてから200 ms以内に動作を判定し、3Dグラフィクスとして提示するオンラインシステムに提案した転移学習法を導入する。ここで、射影行列の計算がオンライン処理の場合に許容できる範囲内に収まるのかが現在不明であるため、この計算時間次第で手法を改良・修正する。 また、初めてのユーザでも簡単かつ高精度に3Dグラフィクス操作を行えることを実証するため、実験を行う予定であるが、このユーザたちはコロナウィルスの蔓延具合によって、広い被験者群に収集をかけるのではなく、狭い被験者群で行う可能性がある。現状、実証の具体的な仕方については未定であるが、実証実験によりコロナウィルスの蔓延を促進することがないよう配慮・対策を徹底する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延により学会や出張がすべて現地ではなくバーチャル開催やオンラインミーティングに変わったため、旅費が0円となった。また、同様の理由で、人を呼び実験を行うことができる状況ではなかったので人件費・謝金も0円となり、消耗品費の使用も予定より少なくなった。これらの理由により次年度使用額として繰り越すこととなった。 次年度の時点ではすでに現状の環境が継続されることが予想されるので、この分の費用を設備費や論文掲載料などへ回すことで使用する予定である。
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