本研究では、個人間・個人内のばらつきの大きいデータの分布を、短いキャリブレーション時間で統計的に補正する転移学習法の提案および応用を目的とした。この目的に対して個人差が大きいことで知られている筋電位データを用いた。具体的には、事前に計測された(ソース)被験者のデータを用いてベースとなる識別器をそれぞれ学習させておき、ドメイン適応理論でターゲットユーザとそれぞれのソース被験者のデータドメインを適応させ、ターゲットユーザのデータをソース被験者のように変換して、アンサンブル処理をする、というフレームワークを構築した。 本年度は、ターゲットデータにラベルがついていない状態でも転移学習可能なフレームワークを論文誌投稿時の査読ループにより改良した。結果として論文誌 Biomedical Signal Processing and Controlに採択された。また、コロナウイルスの影響で被験者実験が行えなかったため、転移学習法を組み込んだ筋電位ベース上腕動作識別フレームワークの実証を行うことができず、課題2でのロボティクスやエンジニアリングに関する国際会議あるいは論文誌投稿はできなかった。しかしながら、ベースとなっている識別器をサポートベクタマシンから畳み込みニューラルネットワークへ変更し、ドメイン適応だけでなくファインチューニングも組み合わせる二段階転移学習法を提案した。この手法は前年度の手法よりも性能が高く、信号処理のトップカンファであるICASSP2022に採択された。したがって、課題1をさらに深化させることができた。
|