本研究の目的は,AI技術の応用が期待される専門分野において,高い精度のみならず結果に対する確かな信頼性を有するモデルを構築することである.このモデルの構築のためには,次の4点を組み込んだ機械学習理論の構築が必要である.【要点1】経験や知識の基となる情報を機械に入力可能な特徴へ変換するモデル.【要点2】経験や知識を表す生体特徴を抽出することで技術者に近い判断が可能なモデル.【要点3】画像分類で判断する際の判断根拠を技術者が理解可能な形で提示するモデル.【要点4】得られた結果が誤っていた場合に,効率よく再学習可能なモデル. 令和4年度は,令和3年度にて構築した【要点3】に関する基礎理論について,様々なインフラ施設の画像を適用することで,当該技術の汎用性の高さを検証した.さらに,令和3年度で構築した基礎理論は,単一のタスクに対してのみ適用可能なモデルであった.そこで,令和4年度では,これらを複数のタスクを同時に解くことが可能なマルチタスク学習に拡張することで,モデルの高度化を実現した.最後に,一度学習したモデルについて,新たに取得したデータを追加で学習可能な転移学習の枠組みを構築することで,結果に対するフィードバックに基づく再学習を可能とした.これにより,【要点4】が達成された. 以上,これまでに構築してきた理論によって,複数の生体情報から技術者に共通の知識及び経験を抽出することが可能になった.これにより,技術者がどこに注目し・何を考えたかを学習可能となることに加えて,実際に構築したモデルからその判断根拠を提示可能となり,高い解釈性・信頼性を有するAI技術が実現した.
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