| 研究課題/領域番号 |
20K19858
|
|---|
| 研究機関 | 東京工業大学 |
|---|
研究代表者 |
内山 瑛美子 東京工業大学, 工学院, 助教 (30845269)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 視知覚モデル |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究では転倒のうち多数を占める躓き・ふらつきに着目したリスク因子の探索・発見を目的とし，(A)心身機能低下が転倒を引き起こす機序のモデル化，(B)データ科学的アプローチによる転倒を引き起こす要因の探索手法の提案，(C)予防のためのスクリーニングテストの開発を目指している．
今年度は特に研究項目(A)及び(C)に関する内容に重点的に取り組んだ．今年度の実績については下記の通り．
(1) 研究項目(A)及び(C)で躓き・ふらつきの転倒モデルを得るのに必要な計測のため，新型コロナウイルス感染症の感染者数が少ない時期に研究への参加協力者を募ることに成功した．計測を実施するための準備も進める中で，新型コロナウイルス感染症の感染が再拡大し，研究代表者が妊娠中であったこと・研究参加協力者が65歳以上の高齢者であったことから，双方の感染リスクを鑑み，予定していた計測を見送らざるを得なくなった．
(2) 研究項目(C)については，基礎として想定している躓きモデルに対し，検討を続ける中で新たに考慮すべきパラメータが出現したため，若年者に対して検証のための実験を実施した．この実験の結果については成果発表の準備が進んでおり，来年度国内学会にて発表予定である．
(3) 研究課題(B)について，今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により計測による運動データが得られる見込みがなくなったため，昨年度開発したテキストマイニングによる転倒実態把握手法を用い，事故情報のテキストデータから日常生活の中で転倒に至るきっかけとなる動作を転倒リスクの大きな動作として抽出することを試みた．この結果についても現在論文執筆中で，来年度雑誌論文として投稿の予定がある．
今年度は本研究の成果を公表するには至らなかったが，上述の通り，次年度以降の研究成果公表に向けて発表準備を進めており，来年度には発表が可能な見込みである．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗が遅れた理由は主に下記2点による計測の延期・研究中断によるものである．
(1) 本研究課題では高齢者を計測の対象としており，また，研究代表者は今年度妊娠中であったため，研究協力者・研究実施者双方が新型コロナウイルス感染症に対して重症化リスクが高く，新型コロナウイルス感染症の感染拡大により，予定していた高齢者対象の計測及び若年者対象の計測の一部を中止せざるを得なくなった．
(2) 研究代表者が妊娠中の経過不良に伴い，1ヶ月の病気休業を取得し研究を中断したが，休業の前後も含めると3ヶ月程度の間，業務の多くを制限せざるを得ない状況であった．また，臨月にあたる期間の計測の自粛及び年度末1ヶ月半の産後休業の取得による研究中断があり，今年度は実質半年程度の研究活動への従事となっていた．
|
| 今後の研究の推進方策 |
今年度は，共同研究先が2021年度秋に実施した調査における参加者に対して研究内容を紹介し，本研究に関する計測への参加協力に同意を得ることができた．またアセスメントツール開発のための追実験にむけ，心理物理学の専門家と協働し，若年者対象の計測を通じて計測手法を確立することができた．
以上の状況及び未達成の項目を踏まえて，今後の研究方策は下記の通りである．
(1) 躓きモデルに対し，新たなパラメータを追加することで改良を行う．今年度はそのために，奥行知覚に対して当該パラメータが影響を及ぼしていることを示すための実験を行った．引き続き，実験によりパラメータを吟味し改良について検討すると共に，既存のモデルによるアセスメントツールの開発を進める．またアセスメントツールの妥当性検証のために，眼科的な奥行知覚・深視力の計測と提案手法との対応をとり，解析を行う．
(2) ふらつきモデルの構築に努める．具体的には，運動前後の立位安静時の圧力中心及び重心のデータから，倒立振子モデルの安定性の議論を通じて，モデルパラメータを用いて参加者のバランス力を表現する．
(3) 受傷を伴うような転倒を引き起こす動作を誘発する環境について解析し，解析した動作及び環境モデルと，(1)(2)で構築した躓き・ふらつきを引き起こす身体モデルとを統合し，マルチモーダルに転倒リスクを探索する．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の感染拡大に伴い，予定していた計測が一部中止となり人件費・謝金の支出が予定とは異なる額となった．また学会参加のための旅費も計上していたが，オンライン開催となったことからほとんど使用することがなかった．次年度に繰り越された使用額については，計測における謝金・人件費に充てる予定である．
|
