研究実績の概要 |
本研究では,転移学習という機械学習の技術をマテリアルズインフォマティクス(MI)に導入し,材料データ量の少なさ問題(スモールデータの壁)の解消と外挿的物性予測の実現を図る.転移学習は、あるドメインで訓練されたモデルを他のドメインに適用するための機械学習技術で,訓練データが足りないタスクに対してよく使われる訓練手法である.人間の学習で例えば,英語の経験がある人は,比較的にドイツ語を容易に学習できることに類似する.したがって,このような推論過程を模倣した転移学習にとって,いかなる方法でモデルのボリューム(経験の量)と多様性(経験の幅)を増加することが本幹になる.本研究は,大量な訓練済みモデルを有するモデルライブラリー(XenonPy.MDL)の開発とそれを活用する仮想材料のスクリーニング・実験検証によって構成されている.XenonPy.MDLは本グループで推進しているMI専用オープンソースプロジェクトXenonPyの一部であり,現在では,有機・無機を含めおおよそ160,000個の訓練済みモデルをデータベースに登録し,産学連携で多数のユーザーに使われている. 令和2年度については,主にライブラリーシステムの開発とモデル訓練に力を入れた.また,実証課題を探すために,結晶,準結晶,ハイエントロピー合金の課題について多数の先行テストを行った. 令和3年度では,準結晶とハイエントロピー合金の課題を巡って研究を展開し,研究成果を国際会議と論文発表で公開した. 令和4年度では,結晶構造探索の課題に転移学習を適用し,従来の予測手法の性能を圧倒する予測アルゴリズムを提案した.
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