研究課題/領域番号 |
20K19867
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
横山 寛 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任助教 (10829823)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳波 / 位相同期 / 機能的ネットワーク解析 / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
本研究では,脳波の位相同期現象に反映される脳機能ネットワークの時系列変化をデータ駆動的に推定することを目的とする.
前年度までの進捗として,脳波位相同期の時間発展を考慮した脳機能ネットワーク推定を行うには,当初検討していた線形なネットワーク結合を前提としたモデルよりも,結合位相振動子などの非線形なネットワーク結合と時系列ダイナミクスを考慮したモデルのほうが妥当である可能性が数値シミュレーションにて明らかとなった.今年度は,それらの成果を発展させる形で,新規提案手法の開発に取り組んだ.新規手法では,特定の周波数帯域における脳波の位相時系列に対して,結合位相振動子モデルを当てはめ,観測脳波データから,結合位相振動子の結合パラメタを逐次推定し,さらに,モデルの更新毎にパラメタ構造の変化度を定量するアルゴリズムを提案した.これにより,ネットワークの時系列推定と時系列ダイナミクスの変化点検知を同時に行う手法を提案した. 続いて,本手法の妥当性を検証するため,数値シミュレーションによる検証を行い,その結果,新規提案手法のほうが,初期検討案の手法や既存手法よりも高い精度で,ネットワークの時系列変化推定ができることがわかった.さらに,オープンデータセットを用いた検証では,聴覚刺激受聴時の脳波データに新規提案手法を適用することで,脳波位相同期ダイナミクスの変化から,聴覚刺激の受聴タイミングを単一試行レベルで高い精度にて予測できることを示した.これにより,数値シミュレーション及び脳波データ解析両方にて新規提案手法の妥当性を示した. これらの成果は査読付国際論文誌に投稿し,アクセプトされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から本年度にかけて,開発を進めてきた提案手法の成果は査読付国際論文誌に投稿し,アクセプトされた.論文掲載に時間を要してしまったが,採択までの過程で行った検証から,提案手法の妥当性を数値シミュレーションと脳波データ解析の両方で示すことができた.手法開発の進捗とコロナ禍の状況を鑑みて,当初予定していた脳波-fMRIデータ取得のための実験計画は先送りにしている.
以上を総合して,「(2) おおむね順調に進展している」と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は脳波-fMRIの同時計測の実験計画を進め,提案手法にて脳機能ネットワークの時系列変化を推定する.具体的には,提案手法により脳波データを解析し,脳波位相同期ネットワークの変化点推定を行う.その後,脳波データから推定された変化点前後での脳活動の変化をより詳細に検証するために変化点前後の脳活動をfMRIより解析する.それらの検証のため,次年度は以下の項目について研究を進める予定である. (1)安静時脳波-fMRI同時計測 (2)同時計測脳波の計測ノイズ除去手法の検討 (3) 提案手法による同時計測データの解析
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法に関する論文採択及び掲載に予定より時間を要し,それに伴って提案手法の確立とプロジェクトの遂行に遅れが生じた.また,それらに加えて,コロナ禍の状況なども踏まえて当初予定していた脳波-fMRIデータ取得のための実験計画も先送りにした.
それらの事由により,当初計上していた旅費及び人件費・謝金に次年度使用額が生じた.今後は,実験計画の遂行を予定しており,次年度予算はそれらを中心に使用していく予定である.
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