本年度は、作者の意図を文章として入力した際に、その意図を反映した歌詞を自動生成することで作詞者を支援するシステムを研究開発した。具体的には、入力文章から意味のみを抽出するために文章-画像生成技術を用い、その画像から歌詞を生成する機械学習手法を開発した。これにより、歌詞に書きたい内容はわかっているが、どうやって書けばよいかわからないユーザーに対して歌詞を生成し提示することで作詞の新たな発想を与えることが可能となる。更に、自動歌詞生成技術を用いた創作活動を円滑にするために、既存の歌詞を剽窃するリスクを下げた歌詞生成手法も開発した。本手法は「生成のために利用しても良いありがちなフレーズ」と「剽窃リスクがある特徴的なフレーズ」を統計的な観点から分類することで、学習データ中の特徴的なフレーズを原理的に生成不可能にした。本成果は言語処理学会年次大会にて発表し、発表論文579件中26件(4%)の研究に与えられる委員特別賞を受賞した。また、音楽情報処理の国際会議であるInternational Society for Music Information Retrievalへ投稿中である。 研究期間全体を通して、音響信号と歌詞テキストなどのマルチモーダル構造解析技術などの基礎研究から、入力された音響信号や文章から歌詞を生成する技術、作詞支援システムを想定した剽窃リスクを低減する手法など、歌詞の創作支援を目指した技術を包括的に開発した。更に本研究期間中に言語処理と音楽情報処理の融合領域を拡げるべく国際ワークショップNLP4Musaをオーガナイザーとして開催し、そこで歌詞情報処理という新たな分野を提案し、本研究テーマの重要性に関する啓蒙活動を行った。
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