研究課題/領域番号 |
20K19880
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野口 渉 北海道大学, 情報科学研究院, 博士研究員 (60868082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深層学習 / 模倣 / 予測学習 / 内部モデル / 自己 / 他者 |
研究実績の概要 |
本研究は自己の一人称的視覚や運動の感覚情報の学習のみから,自己と他者の身体および身体動作の対応付けとそれを用いた模倣能力の獲得が可能な深層学習モデルの構築を目指すものである. 本年度は,自己と他者としての2体の人型ロボットが身体動作を行うシミューレション環境において,自己の一人称的視覚の予測学習を行う深層学習モデルを構築した.構築した深層学習モデルは,視覚画像中の自己と他者の身体を共通のモジュールで並列に処理した上で予測する.共通のモジュールを用いて予測学習を行うことで,自己と他者で共有された身体の内部表現すなわち身体の内部モデルが獲得されると考えていたが,実際に予測学習を行った結果,単純に2次元画像である視覚情報を予測する学習では,共有な身体の内部モデルの獲得は困難であることがわかった.これは一人称視点の画像中で,自己の身体と他者の身体で見え方が大きく異なり,共通の内部表現を用いた予測が困難であることが原因として考えられた.そこで,視覚ではなくロボット身体の立体的な3次元表現を予測するモデルを新たに構築した.3次元表現を介することで,共有モジュールに自己と他者の共有の身体モデルの表現が獲得されることを示した.また,自己と他者の身体の内部モデルに対応する共有モジュールの内部状態を比較することで,自己が他者の姿勢を模倣する実験にも着手している.上記は3次元表現が既知である条件で行った場合の結果であるが,現在は,3次元表現が既知ではない場合にも,視覚情報から3次元の立体構造を推定することで,同様に共有の身体イメージを獲得できる深層学習モデルの構築を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画に従い,一人称視点の視覚・運動情報のみから自己と他者の身体の共有な内部表現の獲得を実現するモデルの構築を試みた.計画当初に考えていた視覚予測の学習によっては共有な身体モデルの獲得が困難であることが判明したが,その後構築した身体の3次元表現の予測学習を行うモデルにより,自己と他者で共有な身体モデルの獲得が可能であることを示した.現状では,一人称視点の感覚情報のみからの共有な身体モデルを獲得することは実現できていない.一方で,次年度に実施予定である模倣の実現に関する実験にも着手している.これらを総合的し,順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
一人称的視覚・運動の情報のみから,自己と他者の共有な身体モデルの獲得を実現するために,ニューラルネットワーク内部に3次元構造を表現し,2次元画像として投影するNeural Renderingの手法を取り入れる.この手法では,真の3次元構造が与えられなくとも,2次元の画像群の学習のみから3次元構造の推定が可能になる.本年度の成果により,3次元表現を介した学習が共有の身体モデルの獲得に必要であることが示されたが,Neural Renderingを取り入れることで,計画当初構想していたモデルと同様な2次元の視覚画像の予測学習の枠組みにおいても3次元表現を用いた学習とすることが可能である.今後は,Neural Renderingを共有モジュールを用いた予測学習と組み合わせることで,自己と他者で共有な身体モデルの構築が可能なモデル構造について検証を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用の計算機の購入を計画していたが,所属研究室に最新のGPUを含めた計算資源が整備されたことで計算機の購入が必須ではなくなったため,物品費の使用額が当初の予定よりも下回った.一方で,本年度の研究成果に応じて計画した次年度以降の計算機実験には,本年度以上の計算資源が必要とされる.そのため次年度使用額は,実験のための計算機・GPUを購入するために使用する.
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