研究課題/領域番号 |
20K19883
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
紅林 亘 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (70761211)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身体運動 / 振動子 / 同期現象 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、複数人の被験者が協調してリズム運動を行う際の認知メカニズムについて、これを数理的な観点から解明することを目的としている。これまで、我々を含めて国内外のいくつかのグループがヒトのリズム協調における認知メカニズムの数理モデル化に取り組んできたが、本研究課題ではそれらの成果を踏まえて、数理モデルの振る舞いを理論的に解析することにより、岡野ら(2017)で実験的に確認されたテンポ加速現象のメカニズムを数理的に解明する。また、ヒトの行動データから数理モデルのパラメータを推定する分析手法を開発した上で、ヒトのリズム強調に関する行動実験を実施し、我々の理論の妥当性を検証するとともに、実際のリズム協調課題においてテンポの加速が抑制される要因について調査を行う。これらの取り組みを通して、ヒトのリズム協調メカニズムに対する学術的な理解を深化し、合唱やアンサンブル演奏について新たな指導法が開発されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の理論的な基盤として、従来の位相縮約理論を拡張した新理論を確立し、国際的な論文誌上で発表した。従来の位相縮約理論では、リズムを持つ個々の素子(振動子)が受ける外力や振動子間の結合が十分に弱いという仮定があり、この仮定が現実の問題に対して適用する際に障害となる場合が多かった。一方、我々が確立した新理論では、我々が以前提案した一般化位相縮約法(紅林ら, 2013)を基礎とし、これを複数の振動子が結合した系に拡張することで、互いに強く結合した系を解析することを可能にした。このような理論的な成果が得られた一方で、コロナ禍の影響で複数人の被験者による行動実験を実施することができず、理論の検証などが完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
複数人の被験者を対象として、互いにリズムを合わせるように教示し、周期的な指タッピングを行わせる行動実験を実施する。また、この行動実験のデータから、数理モデルのパラメータを推定する分析手法を開発する。この手法を利用して実験データを解析し、我々の理論の妥当性を検証するとともに、被験者の音楽経験の有無とパラメータの傾向などを調査し、習熟による認知メカニズムの変化を調査する。また、その分析結果が合唱やアンサンブル演奏などの音楽指導に与える示唆について議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で行動実験が使用できず、実施期間を延長して次年度に予算を執行することとしたため。また、研究計画の遅れにより、論文投稿が遅れ、論文掲載料などを次年度に繰越すこととしたため。
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