研究課題/領域番号 |
20K19886
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
生方 誠希 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 准教授 (10755698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソフトコンピューティング / ファジィ理論 / ラフ集合理論 / クラスタリング / ファジィクラスタリング / ラフクラスタリング / 共クラスタリング / 協調フィルタリング |
研究実績の概要 |
本年度は,不確実性を考慮したクラスタリング手法であるラフクラスタリングの協調フィルタリング(Collaborative Filtering, CF)への応用に関する研究を行い,以下の成果を上げた. 本課題では,クラスタリングベースのCFにラフ集合理論の観点を導入したラフCFとしてRCM-CF, RSCM-CF, RMCM-CF等を提案している.また,本課題では共クラスタリングにラフ集合理論の観点を導入したラフ共クラスタリングとしてRCCMM法を提案している.今回,RCCMM法に基づくCFとしてRCCMM-CFを提案し,数値実験により有効性を確認した.本課題では,大規模データへの適用に向けて,RCM-CFに対しオンライン学習のアプローチを導入し,ORCM-CFを提案している.今回,ORCM-CFに対し,クラスター数を適応的に調節する機構を導入したAdaptive ORCM-CFを提案し,利便性を向上させた.本課題では,ランダム射影によるデータの次元削減を行った上で類似ユーザーの分類を行うRP-RCM-CFを提案している.今回,主成分分析や潜在意味解析,autoencoder,t-SNE等の種々の次元削減手法を活用したRCM-CFを提案し,有効性を確認した.また,RSCM-CFにおいて,様々な粒状化手法を検討し,その効果を明らかにした.加えて,RMCM-CFに目的関数を導入したRMCM2-CFを提案し,数値実験により有効性を確認した.さらに,確率的ラフ近似の概念を導入したProbabilistic RSCM法に基づくCFとして,PRSCM-CFを提案し,その特性を明らかにした. これらの改良によって,計算コストの削減や推薦性能の向上を実現した.本成果について,2件の国際会議発表,5件の国内学会発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主にラフクラスタリングのCFへの応用に関する研究を図った第3年度としては,当初の研究の目的を十分に達成することができた.以下に,個別の課題における達成状況を述べる. 当初計画していた,オンライン学習中にクラスターを適応的に追加・統合することで自動的に適切な数のクラスターを生成する手法については,AORCM法およびAORCM-CFを提案し,利便性を高めることに成功した.本成果は当初の予定通りの成果が得られた. 当初計画していた,ラフ共クラスタリングに基づくCFは,RCCMM法に基づくCF (RCCMM-CF)を提案し,数値実験により有効性を確認した.本成果は当初の予定通りの成果が得られた. 当初計画していた,ノイズ除去機構を導入することで外れ値の影響を低減するNoise RCM (NRCM)法に基づくCFについては理論モデルの構築と数値実験による検証が完了しているが,対外的な発表には至らなかった. 多様な次元削減手法を活用したRCM-CF,RSCM-CFにおける様々な粒状化手法の検討,RMCM-CFに目的関数を導入したRMCM2-CFの提案,Probabilistic RSCM法に基づくCF等は,当初の予定にはなく新たに得られた成果である.
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今後の研究の推進方策 |
第4年度では,ラフクラスタリングの発展的手法および共クラスタリングや協調フィルタリングへの応用に関する研究を継続する. (1) 本課題では,k-Means法の発展によるラフクラスタリングに基づくCFを種々提案している.これらのラフクラスタリングはクラスター重心を使用した手法であり,クラスター内二乗誤差の最小化に基づいているため,外れ値の影響を受けやすい.そこで,ノイズ除去機構を導入することで外れ値の影響を低減するNoise RCM (NRCM)法やNoise RSCM (NRSCM)法,Noise RMCM (NRMCM)法に基づく協調フィルタリングとして,NRCM-CF, NRSCM-CF,NRMCM-CFを提案し,実データに対する推薦性能を検証する. (2) 本課題では,ラフ共クラスタリングに基づくCFとしてRCCMM-CFを提案している.この手法は,ラフ集合理論において重要な観点である粒状性を考慮していないという問題がある.そこで,粒状性を考慮したラフ共クラスタリングであるRSCCMM法やRMCCMM法の導入を検討し,RSCCMM-CFやRMCCMM-CFの性能を検証することで,CFタスクにおける粒状性の影響を調査する. (3) そのほか,AORCM-CFの収束クラスター数の高精度化や計算時間の効率化等が課題となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度内に発表を計画していた国際会議について,投稿分野の変更により2023年度に後ろ倒しされる見込みとなったため. また,理論的検証に用いるデータの容量が比較的に軽微に抑えることができ,また,既存のパーソナルコンピュータの援用が可能であったことから,新規の購入を2023年度に延期したため. 2023年度に掲載・発表する雑誌論文・国際会議の経費や,大規模データのシミュレーション用の物品購入費として使用する.
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