本年度は深層学習を用いた脳波位相の推定手法に重点を置いて研究を遂行した。昨年度に始めた深層学習を用いた脳状態の予測手法に関する研究は、グラフ構造と時間構造を考慮した深層ニューラルネットワークの構築と数値シミュレーションでの検証まで完了していた。本年度は、このモデルをもとに安静時の脳波データを用いた検証とモデルの改良を実施した。具体的には、MSI層(missing signal imitation layer)を新たに提案し、過去の脳波データから現在と未来の脳波の解析信号の分布を予測する深層ニューラルネットワークを構築し実データを用いて提案手法の検証を実施した。結果,提案手法は既存手法より高い精度で脳波の位相と振幅を予測可能なことを示した。この研究は論文としてまとめ、現在は国際ジャーナルに投稿している。 この深層学習を用いたアプローチは単体でも脳波位相を検出することが可能であるが,将来的には非線形振動子モデルとカルマンフィルタを用いた状態推定の手法と組み合わせる予定である。また、異なる実験参加者の脳波データでも適用可能なようにモデルを拡張し脳波実験での利用を目指す。
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