研究課題
本プロジェクトでは、条件付き独立な観測に基づく統計的推測における漸近理論の構築を目指すとともに、条件付き独立な観測の例である画像や時系列を対象とした実践的研究を相補的に行い、知見の利活用と問題意識のフィードバックによる研究の好循環を狙っている。理論面では条件付き独立な観測に基づく統計的推測において成り立つスケーリング則を導出した。ベイズ情報量規準(BIC)はデータの量や質による影響を無視できる極限での近似によって導出される。しかし、本来それらがベイズ推定にどう影響するかはBICの発見から40年以上に渡り未解明だった。研究代表者らの共同研究グループはベイズ推定と統計物理学の数学的な対応に着目し、理論解析を進めることで、計測データの量や質に対するベイズ推定のスケーリング則を初めて明らかにした。これを元にベイズ推定が計測データの質や量に応じた複数の「状態」を取り、状態毎に異なるモデルを最良とみなす性質を発見した。実践面でもいくつかの成果を得た。まず、速度分布関数やバンド構造のベイズ的モデル選択を提案した。複数の候補モデルのうち、実験データに対してどれが妥当なものかはしばしば論争になるが、提案法はこうした議論に一つの指針を与える。研究代表者らの共同研究グループは、直線磁化プラズマ実験装置から得られたデータに提案法を適用し、その有効性を実証した。同様にトポロジカル絶縁体の表面電子状態に関するデータに提案法を適用し、ディラック電子の質量を正確に決定した。更に、パターン形成のダイナミクスを記述する支配方程式の推定法を提案した。結晶のように長距離秩序を持ったパターンは偏微分方程式の定常解として現れることが知られている。研究代表者らの共同研究グループは、条件付き独立な観測として得られた所望のパターンの一枚の画像から逆に、具体的な方程式とそのパラメータをベイズ推定によって求める枠組みを示した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 8件)
Droplet
巻: 3 ページ: e93
10.1002/dro2.93
Plasma Physics and Controlled Fusion
巻: 65 ページ: 125006~125006
10.1088/1361-6587/ad074a