研究期間全体では,連続粘弾性身体を持つソフトロボットの開発による軟体生物の柔らかい動きの実現を目指して研究を行った. 要素技術として,内部の液体によって膜構造を保持できる液体包骨格のソフトアクチュエータを構築した.形状記憶合金(SMA)の収縮によるエラストマーのボディは軸方向に変形させることでアクチュエーションの機能を実現する.複数の液体包骨格アクチュエータを用いてミミズを模倣した小型ロボットを作製した.さらに剛毛を模した構造物を付加することで異方性摩擦を向上させ,蠕動運動による土中移動を可能にした. アクチュエーションシステムの出力を推定するため,液体包骨格アクチュエータのモデルを構築し,理論出力を算出できた.一方で,アクチュエータの変形の解明のため,有限要素解析ソフトでシミュレーションを構築し,変形に影響する要素について考察を行った.シミュレーションの結果による材料の硬さやアクチュエータの構造の合理性を明らかにしていた.上記のハードウェアの開発を踏まえ,制御回路の作製によるロボットの前進量と熱問題を両立させる運動パターンを考察して適切な制御方法を明らかにした. 一方で本年度は,水に界面活性剤とカルボニル鉄粉を混合させることで水性磁気粘性流体を作製し,流体とエラストマーの相性について評価を行った.さらに流体の安定性と磁気抵抗効果に関する性能の測定を行った.作製した流体をエラストマーに取り込ませることで硬さが制御できるソフトな構造を実現した.磁場の調整による構造の変形挙動が変えられることを確認した.
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