本研究では慣性計測装置(IMU)を用いた運動推定手法の開発を目指し、主に下記3項目に取り組んだ。 1) 基盤ソフトウェアの整備と高速化:IMUデータの積分による運動推定に生じる大きな誤差を軽減する課題に取り組んでいる。研究代表者が提案するグラフ最適化に基く誤差修正手法をC++ネイティブライブラリとして整理し、さらにリー代数を用いた方法を取り入れて改良した。従来の実装に比べて約10倍の高速化を実現した。 2) 統計的依存性を用いたIMU-カメラ同期手法の開発:IMUを用いてスポーツなどの運動を計測する際に、ケーブルが妨げとなるため、無線でデータを取得できることが好ましい。ここで必要となる、IMUデータとカメラ画像など他のセンサと統合する際に時刻の同期に取り組んだ。本研究では、物理的な信号線を用いずにデータのみから時刻のずれを推定し同期を得る手法を開発した。この手法は統計的依存性尺度を用いることで、幾何学的な事前情報を用いなくともカメラとIMUの同期が得られることが利点である。実際のセンサを用いた実験により手法の有効性を確認した。 3) 簡便なIMU校正手法の開発:安価なIMUで精度を高い計測を行うためには必須であるセンサ校正の問題に取り組んだ。適当に設置した単眼カメラの前でIMUを8の字に揺動させるというごく単純なデータのみからIMUのバイアス、スケール誤差を校正する手法を開発した。この手法は1)のグラフ最適化と2)の同期手法を活用したものである。現在実験データ収集および評価を進めている。
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