本年度は,ロボットによる対話者間の関係性に配慮した振る舞い生成に関する研究を行った.まず,ロボットが話を聞かせるべき重要人物とその随伴者など,複数の人々に情報提供する場面を想定し,各対話者の重要度に配慮したロボットの説明位置と移動経路を導出するシステムを開発した.場における複数の対話者と説明対象物の位置,各対話者の優先度比率を入力として,ロボットの説明位置と移動経路が導出される.例えば,最も重要な人物と説明対象の近くの説明位置へ,対話者の視野を横切らない最短経路が導出される.また,各対話者の優先度比率に応じて,移動経路導出時の各対話者のパーソナルスペースへの侵入程度と説明位置への移動距離コストのバランスを調整することで,各対話参加者の関係性への配慮表出程度を調整可能とした.さらに,ロボットの振る舞い生成に関する発展的な研究として,ロボットがタスクに失敗した際の謝罪の振る舞い設計について研究を行った.実験の結果,ロボットが人へ謝る際に,1台よりも2台のロボットからの謝罪がより受容されることが明らかになった.また,2台目のロボットが謝罪に加えて1台目のロボットのタスクを補助する振る舞いを示すことが,より好まれることも明らかになった.これらの結果は,タスクや場面に応じた対話者間の関係性に配慮した振る舞いの表出を,ロボットの台数の調整やロボット間での連係動作の設計により行えること示唆している.本年度までに得られた研究成果は,複数の国際会議及び国際論文誌に採択された.
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