群ロボットにおける被覆や探索といった広範囲へ移動しネットワークを通じて情報交換する協調タスクの実現には、ロボット間の無線通信ネットワークの連結性が重要である。群ロボットは多数のロボットによって構成されるシステムであることから、部分的な故障が発生するリスクが大きく、一部のロボットが故障するとネットワーク全体の連結性が崩れる恐れがある。ネットワーク構造を故障に対してロバストにする必要がある一方、従来の連結度を指標にしたロバスト化はシステムの自由度を著しく制限する欠点があった。本研究ではいくつかのロボットが自律的に「働かない」ことを選択し、協調タスクの達成度とネットワーク構造のロバスト性を両立できるような自律分散制御手法を目指した。 最終年度には、各ロボットの故障確率を考慮してネットワークのロバスト性を調整するための設計指標の解析を行った。わずかな数のロボットがロバスト性に貢献するだけでネットワーク全体のロバスト性が大きくなることが確認された。 研究期間全体を通じて、従来の連結度とは異なるロバスト性の指標を定式化し、そのロバスト性を実現するための自律分散制御手法を開発した。新しいロバスト性の指標は、特定のロボットが故障したあとに残るロボットによって構成されるネットワークの最大連結成分のサイズを基にした指標である。どのロボットが故障しても最大連結成分のサイズが一定数以上に保存されるような自律移動手法を開発し、計算機シミュレーションによって効果を検証した。また、提案した自律分散制御手法が被覆タスクの達成に対してトレードオフの関係にあること、一部のロボットのロバスト性へ貢献によってシステム全体の耐故障性が大きくなることを解析した。少数のロボットが被覆タスクへの貢献を犠牲にしてネットワークのロバスト化の役割を担うことで、最大連結成分のサイズを大きく保つことができることが明らかになった。
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