研究課題/領域番号 |
20K19909
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
ジメネス フェリックス 愛知県立大学, 情報科学部, 講師 (60781507)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育支援ロボット / 認知的徒弟制理論 / 共同学習 / 深層学習 / 困惑推定手法 |
研究実績の概要 |
本研究では,学習者の応用力や探求心の向上を促す学習支援である認知的徒弟理論に基づくロボットの行動モデルを開発する.また,学習者に学習支援を適切に提供するために,学習者の表情から学習者の困惑状態を推定する困惑推定手法を構築する.そして,学習者に応用力や探求心の向上を促す教育支援ロボットの実現を目指す. R2年度では,認知的徒弟理論におけるModeling,Coaching,Scaffolding and Fadingで構築された教育支援ロボット専用の行動モデルを構築した.そして,行動モデルを搭載したロボットが学習者に与える学習効果を被験者実験により検証した.その結果,Scaffolding and Fadingだけによる学習支援を提供するロボットとの共同学習に比べ,本行動モデルを搭載したロボットとの共同学習は,大学生の応用力を向上させる可能性があることを示唆した. 困惑推定手法では,画像認識技術の従来研究で提案されている,深層学習を用いて人の表情から感情を推察する感情推定手法に対して,被験者実験により得られた学習者の表情データを教師データとして使用することで,学習者の困惑状態を推定できる可能性を示した.しかしながら,正解率は50%と高くないため,深層学習のモデルを困惑状態に特化できるように改良する必要がある. 認知的徒弟理論に基づく行動モデルでは,査読付学術雑誌1件という成果を上げた.困惑推定手法では国際会議1件,国内学会2件(口頭発表1件,ポスター発表1件)という成果を上げた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の認知的徒弟制理論に基づく従来の行動モデルでは,Modeling,Coaching,Scaffolding and Fadingにおける学習支援の切り替え基準を,1回の学習で算出される,学習者の全問題における正解率としたが,この切り替え基準では,学習者はロボットから提供される学習支援に依存する問題が起きた.そのため,切り替え基準を,問題一つ一つに対する正解数へ変更した.その結果,改良した行動モデルを搭載したロボットは,大学生が得意な問題には簡潔な学習支援を,苦手な問題には丁寧な学習支援を提供できるようになり,大学生へ与える学習効果の向上を促せた. 困惑推定手法においても,被験者実験により収集した学習者の表情を深層学習により分析した.その結果,喜怒哀楽の感情分布を用いることで,学習者の表情から悩んでいる状態の感情分布を推定できる可能性を示した.そして,シミュレーション実験より,本システムは学習者の悩んでいる状態を62%の割合で検出すことが可能であると示した.しかしながら,被験者実験の結果では,正解率51%の割合であるため,深層学習のモデルを改良する必要がある. 上記のModeling,Coaching,Scaffolding and Fadingによる行動モデルと,困惑推定手法を組み合わせることで,本研究の目的である,学習者に応用力や探求心の向上を促す教育支援ロボットを開発できると見出せたため,研究が計画通りに進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として,まず,困惑推定手法の正解率を向上させることである.要因として,教師データが不足していることが一つあるため,被験者実験を再度実施し,教師データを再度収集する.また,深層学習のモデルを改良することで,正解率を向上できると考える.次に,困惑推定手法を搭載したロボットが学習者に与える心理効果を検証する.具体的には,困惑推定手法により,学習者が困惑状態であると推定された場合に,ロボットは学習者にCoaching(問題を解くためのヒント)による学習支援を提供する.これにより,学習者はロボットによる学習支援のタイミングやロボットに対して好印象を得られたかどうかを検証する.そして,困惑推定手法と行動モデルを組み分せ,行動モデルを新たに構築し,ロボットへと搭載する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルスの影響で,学会にはオンライン参加となったことや,当初購入予定していたロボットが部品調達が難しく購入できなかったため,次年度使用額が生じた.
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