研究課題/領域番号 |
20K19912
|
研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
竹之内 宏 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (50726734)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 感性検索エージェントモデル / 進化計算 / 女性用衣服コーディネート / ファジィ推論 / ダイレクトマニピュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は,個人の感性情報や評価に関する法則性を見つけることを学術的問いとして,ファジィ推論を用いた感性検索エージェントモデルにおいて,ユーザの視線情報を用いたデザイン評価を実現し,ユーザの嗜好ルール抽出を可能にしようとするものである.研究2年目にあたる2021年度は,1) ファジィ推論におけるメンバシップ関数とファジィルールパラメータの同時チューニングを試み,2) 提案システムにおける評価対象に女性用衣服コーディネートを導入した. 1)については,初年度に同時最適化を試みたが,現状の手法では充分に最適化されないことが確認されている.このため,提案システムのパラメータ最適化に固執せず,ヒューマンインタフェース分野の観点から,ダイレクトマニピュレーションによりパラメータを同定することを検討した.すなわち,評価対象に対して,単に好みや好みでないなどの嗜好情報だけでなく,各デザインパーツにおける好みのデザインなどをユーザに積極的に問いかけることで,ユーザの嗜好探索をアシストしようとするアプローチである. 2)については,初年度から女性用衣服コーディネートを対象に提案システムを構築することを目標とし,実現できた.本コーディネートについては,本研究費によって3Dモデルとして外注し,所望の衣服コーディネートを活用できるようになった. また,本研究の基本となるシステムを用いた評価実験において,2020年度に国際会議発表を1件実施しており,2021年度は更なる検証を加え,学術論文採録1件,国内学会発表3件の成果につながった.また,提案システムの派生版となる音楽検索システムにおいても国際会議発表を1件実施した.2022年度が最終年度となるが,残された課題であるパラメータ同時チューニング及び視線情報の利用方法に向けて,引き続き各種検証を続けていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は研究2年目であり,1) ダイレクトマニピュレーションによるメンバシップ関数とファジィルールパラメータチューニングを試み,2) 提案システムの評価対象に女性用衣服コーディネートを導入した. 1)についてはこれまでの進化計算手法による最適化に対して,ダイレクトマニピュレーションによるユーザのより細かな嗜好情報を取り入れることに取り組んだ.具体的には,女性用衣服コーディネートをユーザが評価する際に,好みの衣服デザインを選択し,以後のレコメンドでは当該衣服デザインを必ず使用したコーディネートが提示されるようにしている.2021年度は本検証についてはシステム試作段階であり,評価実験を実施したが,メンバシップ関数及びファジィルールパラメータの同定に対しては,充分な成果が得られていない.今後の研究の推進方策に示すように,引き続き検証を試みていく予定である. 2)については,これまでのアバターデザインにリアルさを付加した3D衣服モデルを発注するべく,衣服のデザインを選定し,活用できる状態となった.具体的には,女性用衣服コーディネートとして,トップス(タンクトップ:12色,Tシャツ:9色,カットソー:8色,シャツ:9色,ブラウス:8色)とボトムス(ロングスカート:8色,ラインスカート:8色,スラックス:8色,ジーパン:5色)の衣服パーツを自由に着せ替えできる3Dモデルとなる.また,本モデルは,ファッションショーのランウェイを歩く動作をイメージしており,その間に衣服モデルを前後左右から確認できるインタフェースを介してユーザに提示していうる.メンバシップ関数及びその特徴量についても,ファッション雑誌などを参考に衣服のイメージを表現する形容詞を選定し,設計した. これらより,1), 2)についていずれも進捗があり,今後の進捗に見込みがあるため,おおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
先述したように,今後は,2021年度に未完了であった1) ダイレクトマニピュレーションによるメンバシップ関数とファジィルールパラメータチューニング,2) ユーザの視線情報の更なる解析に取り組み,研究の完成に向けて取り組んでいく. 1)については,2021年度にプロトタイプを構築したシステムについて改良を施し,ユーザの嗜好情報を効率よく取得し,学習できるシステムにしていく予定である.その際,ダイレクトマニピュレーションの頻度やユーザが指定可能な衣服デザインパーツの選択,ダイレクトマニピュレーションによるメンバシップ関数及びファジィルールのパラメータ同定の影響などを検証していく. 2)については,進捗が遅れているが,解析に努めていく.また,瞳孔の開き具合などのデータからユーザの嗜好に関する傾向を判定できることがベストであるが困難なようであれば,従前の5段階評価を引き続き採用するなどの対応を考えていく.現状,瞳孔の開き具合を測定するには高価な視線計測装置が必要となり,仮に提案システムの実用化において瞳孔関連のデータを使用することになった場合は,一般に普及しにくいシステムになる可能性もある.このような想定も含めて提案システムにとって有用で,ユーザが積極的にシステムを利用できるような評価インタフェースを検討していく. また,女性用衣服コーディネートの特徴量およびメンバシップ関数については,構築は完了しているものの,評価実験の結果からは衣服の特徴をうまく表現できていない可能性も否定できないため,改めて見なおす必要があるかもしれない. 1),2)の各項目については,並行的に作業・検証を進めることが可能である.このため,2021年度の進捗遅れについては,遅くとも2022年度上期にはカバーし,最終提案システムを用いた各種検証につなげていくことを想定している.
|