研究実績の概要 |
病態が不均一な多因子疾患に対して、遺伝・曝露因子や、病態の遷移のパターンなどで患者を層別化し、サブクラスごとにリスク予測、治療成績の最大化や、新しい治療方法の開発を行う精密医療の実現のための、患者の層別化手法が検討されてきたが、これまでに、多因子疾患の病態の多様性の機序の理解に有用な手法は開発されていない。そこで、妊娠高血圧症候群(HDP)を例にとり、東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査参加者の約22,000人の妊婦のHDPの病型と、妊娠週数ごとの病態を、病型分類(フェノタイピング)により同定し、同定した約2,200人のHDP患者の病態遷移のパターンを、時系列クラスタリングにより層別化した。層別化により得られた特徴的な病態変化のパターンを時系列サブタイプ(temporal-subtype)と名づけ、得られたサブタイプの臨床的特徴を解析した。その結果、同じ最終病型に至る時系列サブタイプの間で、メジャーな有害アウトカムのリスク(オッズ比)が大きく異なることを見出し、HDPの不均一な病態の一部である、有害アウトカム発生の多様性に対応するサブクラスの候補を得た。また、HDPの病型には、重症化リスクの異なる、早期発症型と晩期発症型が知られているが、得られた時系列サブタイプは既知の分類とは対応せず、HDPには今まで知られている病型分類以上に多様性があり、その解明のための足がかりが得られたことを示している。
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