研究課題/領域番号 |
20K19916
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仲嶋 なつ 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任研究員 (60848373)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 時変遺伝子ネットワーク / 1細胞解析 / 細胞分化 / LASSO回帰 / 動的計画法 |
研究実績の概要 |
一細胞単位での遺伝子の発現量を網羅的に測定する1細胞RNA-seqによって、細胞の分類や軌道推定を行うことが可能である。本研究の目的は、一つの細胞から木構造を示す枝分かれ状に変化するような細胞分化において、1細胞RNA-seqにより得られる細胞の擬似時系列を用いて、細胞が分岐する変化点と各細胞種での遺伝子ネットワークを推定する手法を開発することである。今年度は、より大規模なネットワークや一遺伝子あたりの検出感度が低い1細胞RNA-seqデータに対しても適用可能となるように、LASSO回帰を適用し、分化する細胞種数を用いて、ネットワーク全体での二乗誤差の総和が最小となるような最適化問題として定式化を行った。また、擬似時系列推定から得られた細胞の二次元座標をもとに、各細胞種において、中央値を示す細胞から隣接した数十細胞を抽出し、それらの細胞での遺伝子発現量を用いることで、細胞分化における十分なサンプル数の発現量データを作成する手法を開発した。さらに、ネットワーク構築において追加する辺の推定に関しては、データの全遺伝子発現量を用いて、各遺伝子ごとにLASSO回帰による特徴選択を行う手法を開発した。分化細胞の1細胞RNA-seqのデータに適用したところ、遺伝子数が多く、疎な発現量データからも特徴量としての追加する辺を推定できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1細胞RNA-seqデータから、追加する辺についての特徴抽出と細胞の擬似時系列を用いて、各細胞種での遺伝子ネットワークを推定する手法を開発するが、今年度は、実施予定としていた、最小化問題としての定式化、1細胞RNA-seqデータからの、LASSO回帰を用いた特徴抽出と、細胞の擬似時系列をもとに、遺伝子ネットワーク推定に用いる各細胞種での遺伝子発現データを作成するための手法を実装していることから、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最小化問題を解くために、細胞が分岐する変化点と各細胞種における遺伝子ネットワーク構造を推定するための、二重動的計画法に基づく計算手法の開発を行う。特に、個々の細胞が分化する細胞種データをもとに、二重動的計画法を拡張する。また、各遺伝子における二乗誤差の計算については、大規模なデータに対応した並列計算が可能となるように、計算手法の実装を検討する。さらに、細胞分化の1細胞RNA-seqデータを用いた検証実験を行うことで、各細胞種間での遺伝子ネットワーク構造の比較や、分化における遺伝子間相互作用を解析し、手法の有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で、予定していた国際会議などに参加できず、学会参加費、旅費が使用できなかったため。次年度使用額は\952,117であり、本年度は、遺伝子数が多い1細胞RNA-seqデータを用いた解析を予定しているため、解析用計算機の購入費として使用する。
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