研究課題/領域番号 |
20K19919
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
柴田 賢一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 非常勤教員 (90753799)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 解糖系振動 / 白色脂肪細胞 / レプチン分泌 |
研究実績の概要 |
脂肪細胞は脂肪を蓄積するほかに「レプチン」と呼ばれるホルモンを分泌する。レプチンは飽食ホルモンとも呼ばれ、脳の視床下部に作用して食欲を抑制する作用がある。レプチンは、肥満や糖尿病、妊娠、がん、アルツハイマー病などとも関連性があると言われている重要なホルモンである。これまで研究代表者は、ブドウ糖を代謝する「解糖系」と呼ばれる代謝システムを研究してきた。がん細胞によるブドウ糖取り込みを促進させることで「解糖系振動」と呼ばれる現象が引き起こされることを明らかにしている。研究代表者は血中レプチン濃度の振動は解糖系振動に起因しているのではないかと考えている。 白色脂肪細胞における解糖系振動とレプチン分泌の関係を明らかにするために、まず白色脂肪細胞に解糖系振動を起こさせる方法を検討している。シミュレーションにより、ブドウ糖を細胞内へ取り込む速度が速い時に解糖系振動を起こしやすい事がほぼ確実であることが判明した。これに基づき、ブドウ糖の取り込み速度を上げることで白色脂肪細胞に解糖系振動を起こさせる条件を検討している。具体的には、がん細胞でこれまで行ってきた(1)飢餓処理のほか、(2)低酸素処理でHIFを誘発することでブドウ糖の取り込みと解糖系を亢進させる方法や、(3)ニオソーム(界面活性剤で構成された二重膜に覆われた小胞)によって強制的にブドウ糖を細胞内へ注入する方法を検討している。 また、がん細胞を用いた実験により、シアン化カリウムでミトコンドリアの呼吸を阻害すると解糖系振動の振幅が大きく増幅される事が明らかになった。低酸素処理はミトコンドリア機能を低下させるため、前述の低酸素処理が解糖系振動を誘発させる方法として有望であると予想される。現在、本研究と並行して、その他ミトコンドリア機能に関わるいくつかの阻害剤などについても解糖系振動との関係を調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞培養などを伴うため実験にはまとまった日数を確保する必要があるが、コロナ禍でまとまった時間が取れない時期があり、実験に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞に解糖系振動を誘発させるために、継続して(1)飢餓処理によるブドウ糖取り込み速度の促進や、(2)低酸素処理でブドウ糖の取り込みと解糖系を亢進、(3)強制的にブドウ糖を細胞内へ注入する方法を検討していく。 脂肪細胞は、脂肪前駆細胞3T3-L1に適切な処理をすることで白色脂肪細胞に分化させることで用意している。脂肪前駆細胞3T3-L1は分化処理の条件を変えることでレプチンの分泌量や油滴への脂肪の蓄積量が変化する事が知られている。これらの条件もまた解糖系振動の誘発と関連している可能性があるため、ブドウ糖の取り込み速度を操作する先述の方法に加えて、脂肪前駆細胞を白色脂肪細胞に分化させる方法についても、解糖系振動との関係を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額なので、使い切らずに次年度予算と合わせる事で効率的な運用をするため。 遠沈管やパスツールピペットなどの物品費として使用する計画である。
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