研究課題
我が国の心血管系疾患や脳血管障害等の循環器疾患による死因は全体の約25%に及んでおり,その循環器疾患の主原因は動脈硬化であることが知られている.動脈は一度硬化が始まると二度と柔らかくはならないが,動脈硬化の初期症状である血管内皮機能障害のステージまでは早期治療により完治することが明らかになっている.そのため血管内皮機能を非侵襲かつ定量的に計測する技術は動脈硬化早期診断のために非常に重要である.我々の研究グループでは,血管内皮機能を簡便計測するために家庭などに広く普及しているオシロメトリック式自動血圧計の原理を応用した計測法を提案してきたが,動脈硬化は自覚症状のない疾患であるため,動脈硬化の予備者自身に自発的な検査の受診意思がない限り血管内皮機能低下を早期発見することは困難である.そこで,血管を計測する代わりに体表の何らかの情報から血管内皮機能を推定する方法が求められている.本研究ではカメラを用いて耳朶皺襞(earlobe crease: ELC)と呼ばれる耳朶のしわの長さ,形,占有面積,位置,深さなどの特徴を定量抽出し,それら複数の特徴から確率ニューラルネットワークを用いて血管内皮機能を評価するシステム開発を行う.最終年度では前年に開発したELC抽出アルゴリズムから得られたELCの特徴を基に,血管内皮機能計測を臨床現場で用いるためにスマートデバイスへの実装を行い,システムの操作性向上に係る検討も行った.
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