研究課題
培養神経細胞回路への刺激に対する時空間的な活動パターンの実測と理論的解析を通して,ネットワーク中のリカレント接続が,提示された2クラス分類問題への判定精度をどのようにして高めるのかに迫る。具体的には,(1) 神経ネットワークへの任意の時空間刺激パターンの提示に向けて,マイクロパターン上の標的ニューロンに対する神経刺激の方法論を構築する第一段階と,(2) 培養神経回路を用いたリザバコンピューティングによる情報処理能力の評価を行う第二段階とからなる。2020年度には,二本針電極を用いた神経細胞刺激手法の刺激選択性の調査を行い,第一段階の目標達成を試みた。具体的には,マイクロパターン上に構築した,リカレント接続(オータプス)を有する単一神経細胞回路の周辺に二本針電極を配置し,電気刺激を与えた。電極特性および刺激パターンが標準細胞に与える影響が実験と理論の両面から調査された。結果,二本針電極は,標的細胞に電極を近接させたうえで約5Vp-p以上の双極方形波パルスを印加することで,標的細胞を再現性良く発火させることができ,少なくとも300 µmの空間分解能を有することが実験的に明らかになった。刺激提示後の標的ニューロンの自発発火頻度が上昇する傾向もみられ,電気刺激によって標的ニューロンの内部状態が可塑的に変化している可能性が確認できた。なお,電極先端部の金属露出部の実効面積が刺激の強度や選択性に影響する傾向も得られたが,定量的評価に関しては2021年度以降へと持ち越すこととした。一方,LTspiceを用いた理論解析により,電極先端部の電気二重層容量が刺激強度に強く影響すること,二本針をともに標的ニューロンに近接配置することで理論的には15 µmの空間分解能を達成できることが明らかになった。
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Electrochemistry
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10.5796/electrochemistry.21-00032