研究課題/領域番号 |
20K19926
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
和久井 直樹 長岡工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 助教 (80786038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環状ペプチド / アルブミン / 特殊アミノ酸 |
研究実績の概要 |
環状ペプチド創薬において環状ペプチドの腎排出は課題の1つとなっている。腎排出を回避するには血漿中に含まれるアルブミンへの結合が鍵となるが、環状ペプチドはアルブミンに結合しにくい。本研究課題ではアルブミンへの結合を促進する特殊アミノ酸が存在するかどうかを明らかにすることを目的としている。 本年度はアルブミンに結合する化合物の構造的特徴を明らかにすることを目標として研究を実施した。Protein Data Bankに登録されているアルブミンと化合物の複合体構造を対象に、アルブミンに結合する化合物のアクセプター数、ドナー数、脂溶性、極性表面積、分子量をオープンソースのケモインフォマティクスソフトウェアRDKitを用いて算出した。アルブミンには複数の化合物結合部位が知られており、結合部位ごとに化合物の物理化学的特徴量を整理した。 また、アルブミンと環状ペプチド医薬品として上市されているダプトマイシンの複合体構造を世界で初めて明らかにした。ダプトマイシンはアルブミンのサブドメイン1Aに結合していた。分子動力学シミュレーションおよび相互作用解析を実施した結果から、ダプトマイシンが有する炭化水素鎖および環構造の両方が複合体形成において重要な役割を果たしていることが明らかになった。炭化水素鎖はアルブミンの脂肪酸結合部位と疎水性相互作用を、環構造はアルブミンの分子表面に存在する極性アミノ酸と水素結合を形成するという知見を得た。この知見に基づき、アルブミンのサブドメイン1Aに脂肪酸が結合した複合体構造を中心に分子動力学シミュレーションおよび相互作用解析を進め、炭化水素鎖の長さの違いによる相互作用の違いを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画に基づき、以下のことが達成できたため「おおむね順調に進展している」と評価した。 (1)ヒト血清アルブミンに結合する化合物のアクセプター数、ドナー数、脂溶性、極性表面積、分子量をオープンソースのケモインフォマティクスソフトウェアRDKitを用いて算出し、結合部位ごとに化合物の物理化学的特徴量を整理した。 (2)ヒト血清アルブミンと環状ペプチド医薬品であるダプトマイシンの複合体構造を明らかにした。ダプトマイシンはヒト血清アルブミンのサブドメイン1Aに結合しており、炭化水素鎖による疎水性相互作用と環構造との水素結合が複合体形成に重要であるという知見を得た。 (3)サブドメイン1Aに化合物が結合した複合体に対して分子動力学シミュレーションおよび相互作用解析を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も引き続き、複合体構造に対して分子動力学シミュレーションと相互作用解析を実施する。2年目は特に、ヒト血清アルブミンと水素結合を形成するような化合物を中心に解析を進める。ヒト血清アルブミンとの相互作用様式に基づき、結合に重要となる構造的特徴をさらに明らかにすることを目指す。特殊アミノ酸ライブラリの中から構造的特徴に基づき候補となる特殊アミノ酸を絞り込み、血漿タンパク質結合能アッセイに用いる環状ペプチドの設計を実施する。
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