環状ペプチド創薬において環状ペプチドの腎排出は課題の1つとなっている。腎排出を回避するには血漿中に含まれるアルブミンへの結合が鍵となるが、環状ペプチドはアルブミンに結合しにくい。本研究課題ではアルブミンへの結合を促進する特殊アミノ酸が存在するかどうかを明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度設計した特殊アミノ酸を含む環状ペプチドに対して血漿タンパク質結合能アッセイを実施し、特殊アミノ酸の導入によって血漿タンパク質結合能が改善するかどうか明らかにすることを目標として研究を実施した。比較対象となる天然アミノ酸のみで構成される8残基と7残基の環状ペプチド、チロシン残基を特殊アミノ酸に置き換えた8残基と7残基の環状ペプチドの合計4種類の環状ペプチドを合成した。合成した環状ペプチドに対して血漿タンパク質結合能アッセイを実施した。7残基の環状ペプチドにおいては、特殊アミノ酸の導入によって血漿タンパク質結合率が20.7%から13.6%に低下する結果となった。一方、8残基の環状ペプチドにおいては、特殊アミノ酸の導入によって血漿タンパク質結合率が20.7%から33.1%に向上する結果が得られた。単一の特殊アミノ酸を導入するだけではアルブミンへの結合が促進されるとは限らないことが明らかとなった。
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