本研究では、プロのクリエータではない一般の人々によって創作されるユーザ生成コンテンツ(UGC)を対象に、UGC時代における消費コンテンツの有用な推薦・検索環境の実現を目的としている。今日では音楽コンテンツもUGCとして創作されることが増えており、まだ聴いたことのない膨大な楽曲の中から自分の好みに適した楽曲を見つけることがますます難しくなっていることから、音楽コンテンツを対象に以下の研究成果をあげた。 1. アーティストが持つ性質と楽曲との総合的な類似度と、アーティストの持つ特徴的な性質を楽曲が持つ度合いに着目し、ユーザのアーティストへの親密性に基づく検索、アーティストにとっての楽曲の典型性に基づく検索、アナロジーに基づく検索の3種類の検索を提案した。 2. ユーザが既に消費したコンテンツに対する推薦理由の提示という新しいアプローチを提唱した。楽曲推薦における9種類の推薦理由を、属人的要因、社会的要因、コンテンツ的要因の三つの要因に基づいて提案し、622人を対象としたアンケート調査によりその有用性を検証した。 3. 人々がWeb上で集まって同じ瞬間に同じ楽曲を聴きながら、リアルタイムにコミュニケーションが取れるWebサービスである、音楽発掘カフェ「Kiite Cafe」を提案した。Kiite Cafeでは(1)再生中の楽曲に対して「好き」を伝えることの動機づけ、(2)多様な楽曲を好きになる機会の獲得、(3)キュレータとしての貢献、という3つの体験がユーザにもたらされる。 4. スマートフォンでの楽曲聴取時に、人がなぜ・どのように歌詞を閲覧しているのかについて調査した。調査結果から得られた知見を活用することで、人々がより積極的に歌詞を閲覧したり未知の曲を聴いたりしたくなるような、特に楽曲配信プラットフォームにとって有益であると考えられる機能の例も提示した。
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