研究課題/領域番号 |
20K19936
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福嶋 政期 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 助教 (30761861)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学習支援システム / VR / 実演 |
研究実績の概要 |
日本人の英語学習者が音声練習において正しい調音を学ぶために、達成すべき正しい調音を英語母語話者が直接教示できるようにする。そのために、英語母語話者の音声や顔を学習者のものに変換して提示する学習を提案する(提案1)。また、英語の言語感覚を理解するために、英単語が持つイメージを感覚刺激に変換し、それを体感しながら学習することを提案する(提案2)。本年度は特に提案2について、バーチャル空間を利用した学習システムを実装し、その効果を検証した。
英語の言語感覚を理解するために、バーチャル空間で身体や道具を使うことで単語の意味を再現しながら学習するシステムを実装した。例えばfondle(なでる)という単語を理解するために、実際に猫を撫でる動作をしたり、conjure(魔法をかける)という単語を理解するために、魔法陣に杖をかざすなどの動作しながら覚えるものである。このような実演を用いた英単語学習において、バーチャル空間の背景(背景オブジェクトおよび背景描画)の有無が、英単語の記憶保持に与える影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験のために、動作で意味を表現できる英単語で、実験参加者の事前知識の影響が少ないと考えられるが英単語を選定した。まずはSVL12000の中から超上級(レベル10-12)の英単語を抜粋し(3000語)、WordNetのカテゴリがverb.motion,verb.creation,verb.contact,verb.possession,verb.competition,verb.consumption,verb.body に該当し、他動詞の英単語だけを選定した(166語)。さらに、意味の重複やwordnetカテゴリのばらつきを考慮しながら、21単語を実験で利用した。実験参加者が大学生20名で、背景描画ありの条件で学習するグループ(提案条件)と、背景描画なしの条件で学習するグループ(ベースライン条件)に分けられた。結果として、学習直後の再生テスト(英単語をみて、日本語訳を回答するテスト)において、提案手法でも記憶保持が有意に向上していた。バーチャル空間での実演を伴う英単語学習において、背景描画の有無が、学習直後の記憶保持に影響する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
英語の言語感覚を理解するために、バーチャル空間での実演を利用し、その際の背景描画が与える影響を検討した。ただし、被験者間実験としては実験参加者数が十分ではないことや、実験統制においてもまだ課題がある。今後、これらを改善した上での再実験が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症対策のために計画していた実験などが延期になり、次年度まで研究を延長する必要が生じたため。
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