本学には医学標本館があり、学内の医学初学者、県内のコメディカル領域の学生が生理学・解剖学の知識を深めるために見学に訪れる。見学者への標本の説明は、札と教職員の解説に頼っているが見学者にとって十分であるとは言えない。医学標本での効果的な学習を目指して、AR技術に着目し、ARによって実物の標本に仮想情報を重畳表示することで人体構造の理解への相乗効果が期待できると考え、医学標本館におけるAR見学支援システムを構築した。 既存システムでは、モニタ提示による標本の再現性不足や仮想ラベルなどのARによる平面的なUIのみで人体構造の立体的理解には不十分な場合があり、実物の標本と3D解剖CGを組み合わせたシステムは実現出来ていない。また、医学標本館の見学は、グループ学習に最適な場であるがユーザ間のAR情報共有が困難なため、その場を有効活用出来ていなかった。そこで、3D解剖CGや解剖模型を利用したARによる空間的UIを実現し、ARマルチユーザ環境による協調学習支援システムへ展開させることを目指すために、以下の3つのシステムを開発する。 1. 光学透過型HMDを使用することで、自然な視界に仮想情報を重畳表示することが可能となり、医学標本の質感を維持したAR情報を提示する。 2. 標本と3D解剖CGを統合させたAR環境に、ARのジェスチャ操作機能およびセンサを埋め込んだ解剖模型によるAR操作機能を合わせ、ARによる空間的UIを適応する。 3. ネットワーク技術を利用した複数のHMDを用いた情報共有と三人称視点映像による視点共有を適応することでARマルチユーザ環境を提供する。 本年度は、ARによる空間的UIの構築や2台の透過型HMDのネットワーク通信部分の開発を進めた。光学透過型HMDによる仮想情報を重畳表示可能な対象標本の拡張を実施した。
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