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2020 年度 実施状況報告書

外科手術における看護技術の可視化と定量評価を実現する新しい看護教育モデル

研究課題

研究課題/領域番号 20K19942
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

楠田 佳緒  東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (00780131)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードRFID / 手術器械 / 器械出し看護師 / 医療安全
研究実績の概要

治療・診断技術の発展に伴い,医療機関には最先端医療機器が導入されている.一方で,看護業務や看護教育は未だにアナログ情報や経験的裁量に依存している.特に,外科手術の看護技術はその特殊性から熟練看護師による直接指導が行われており,定量評価に基づく教育指導は行われていない.本研究の目的として,看護技術評価の可視化と定量評価を実現するため,看護教育モデルの構築とモデル因子の最適化を行う.方法として,手術器械トレーサビリティシステムや動画像記録装置等のマルチデバイスによって,手術工程を自動特定する.これらの情報から,技術習得に強く影響する最適因子を導き出し,外科手術領域における新しい看護教育モデルを提案する.
本年度の目的として,(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした.成果として,(1)では手術器械情報を取得するためのハードウェア開発を行うため,整合回路の基板設計を行った.現在は手作業にて配線を行っているため,整合回路の調整に時間を要することが課題として挙げられる.今後は基盤によるインピーダンスの安定化を図る.(2)では,手術器械の総使用率について評価を行い,平均65%であった.すなわち,35 %は使用されないまま洗浄・組立・滅菌工程を経ていることが明らかになった.これらの成果より,準備器械の最適化を図ることができ,医療安全向上に寄与できると考えられる.これまでの研究成果は,学会(国内1件)にて発表を行い,投稿論文としてまとめている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の目的として,(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした.
(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発では,手術室内でRFIDタグ付き手術器械の情報を安定して取得するため,整合回路を含めた回路設計を行った.さらに,本システムとOPeLiNKを接続するため,情報管理アプリケーションの回収を実施した.
(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価では,手術器械の使用状況(手術での使用の有無)について手術器械の使用率の記録を実施した.結果として,手術器械の総使用率は平均65%であった.すなわち,35 %は使用されないまま洗浄・組立・滅菌工程を経ていることが明らかになった.セット内に複数本が含まれる手術器械のうち,使用割合が最も低いのはアリス鉗子の9.5%であった.例えば,コッヘルは10本が格納されているが,手術器械種類ごとの平均使用率は5.5本,標準偏差を含めて8本含めれば対応できる可能性が示唆された.この結果より,アリス鉗子,田島持針器小,コッヘルは,単包の準備で対応できると考えられる.本成果については,投稿論文(手術医学会誌)としてまとめた.

今後の研究の推進方策

引き続き,マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発と,RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行う.本研究では,これまでにマルチデバイスの整合回路等の設計を開始し,インピーダンス調整等を安定して行える環境を構築しており,引き続きシステム開発を行う.さらに,看護教育モデルの最適化を行う.感染症予防の観点から臨床現場での情報取得が困難であることから,新人看護師と熟練看護師の器械出し作業を取得するため実験環境の調整を進める.また,これまでの乳腺外科手術野ソケイヘルニア手術の器械出しデータを蓄積しているため,それらの解析に着手する.
さらに,器械セットの最適化について改善活動を実施し,手術器械のコスト削減や,再利用の作業負担の評価を行う.RFIDタグのトレーサビリティ特性を活用し,感染症患者発生時の追跡評価などにより医療安全向上に向けた検討を行う.

次年度使用額が生じた理由

本研究では,当初計画において,新人看護師・ベテラン看護師の手術情報を取得する予定だった.しかし,緊急事態宣言の対応によりアンテナ設計の打ち合わせや臨床現場訪問が困難になったため,システムの設計と臨床現場での情報取得において計画よりも遅れが生じた.したがって,次年度に繰り越す課題として,引き続きマルチデバイスによる手術工程認識システムの開発を継続するとともに,看護教育モデルの因子最適化にむけた情報取得を行うこととした.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] RFIDタグを用いた手術器械使用率の検討2021

    • 著者名/発表者名
      石田志保,楠田佳緒,山下和彦,角典以子,田中聖人
    • 雑誌名

      手術医学誌

      巻: 42 ページ: 16-21

    • 査読あり
  • [学会発表] 医療安全を目的とした術中支援システムの開発2020

    • 著者名/発表者名
      楠田佳緒
    • 学会等名
      日本コンピュータ外科学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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