治療・診断技術においては,最先端の研究開発が進められる一方で,看護業務や看護教育は未だにアナログ情報や経験的裁量に依存している.特に,外科手術の看護技術は看護師養成機関での指導は限定的であり,熟練看護師による直接指導が行われている現状がある.本研究の目的として,看護技術評価の可視化と定量評価を実現するため,看護教育モデルの構築とモデル因子の最適化を行う.方法として,手術器械トレーサビリティシステムや動画像記録装置等のマルチデバイスによって,手術工程を自動特定する.これらの情報から,技術習得に強く影響する最適因子を導き出し,外科手術領域における新しい看護教育モデルを提案する. 本年度の目的として,(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性に関する有効性評価を行うこととした.成果として,(1)では手術器械情報を取得するため,情報取得用アンテナの整合回路基板設計を行った. (2)では,RFIDタグ付き手術器械の安全性を評価するため,当該病院が保有する手術器械セットの管理データを取得し,手術器械のセット間移動に関する基礎的な分析を行った.さらに,2022年度に実施した手術器械トレーサビリティの実験結果をまとめ,論文を投稿した.以上より,感染患者に使用した手術器械の特定を正確かつ短時間に検索できることがわかり,手術器械トレーサビリティにおける本システムの有用性が明らかになった.
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