研究課題/領域番号 |
20K19945
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐藤 周平 富山大学, 学術研究部工学系, 助教 (90815599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流体シミュレーション / 高精細化 / 流れ関数 / 流れのガイド |
研究実績の概要 |
コンピュータグラフィックスにおいて液体の流れを高精細化するための前段階として煙の流れにおいて,ユーザが所望する流れの通りに高解像度シミュレーションを制御する,流れのガイド手法を提案した. 後処理的に流体の流れを高精細化するためのアプローチはいくつか提案されており,ノイズやデータベースを用いる方法や,流れをガイドする方法などが存在する.その中でもガイド手法は他の高精細化手法に比べ写実的な流れを生成することができ,これまでにいくつかの方法が世界的にも提案されている.しかし,物理法則を満たしつつガイドされた流れを得るために,サイズの大きな最適化問題を解く必要があり,これまでの方法では膨大な計算時間を要していた. そこで提案手法では,流れのガイドを流れ関数の空間において最小化問題として定式化することで,従来の手法と比べ大幅な高速化を達成しつつ,物理法則を満たすガイドされた流れの生成に成功した.ユーザが所望する流れを提案システムに入力すると,その流れに従うような高精細な流れが生成される.流れ関数の空間で最小化問題を解き,流れを求めるため,自動的に物理法則の一つを満たすことが出来る.提案手法は,シミュレーションにより作成された入力の流れ以外に,ユーザが手動で作成した流れでもそれに従うようにガイドし,尤もらしい流れを生成できる.また,実装が容易であり,加えてガイドの度合いを一つのパラメータで簡単に制御可能なため,コンピュータグラフィックスでの映像制作への貢献度も高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題申請時点では,申請者が以前に提案した流れの事前計算したデータを利用して煙の高精細化を行う方法をベースとして,機械学習を用いて拡張を行い,液体への適用を計画していた.しかし,申請者の以前の方法を適用する段階で,計画していた方法では流れに不連続が発生するなど良好な結果が得られず,またその後にもいくつかの手法の変更を行い実験したが,データを利用しての液体の高精細化を実現するには至らなかった. そこで,データを利用するアプローチは取りやめ,これまでに提案されている他の高精細化アプローチを基に,液体の高精細化が可能か検討した.データを利用した方法での実験において流れの不連続が問題となっていたため,高精細化のアプローチの中でも,ユーザが所望する流れの通りに高解像度シミュレーションを制御する,流れのガイド手法に注目し,これを基に液体の高精細化手法を考案する方向に転換した.しかし,最初から流体の中でも扱いの難しい液体を対象にするのは手法の開発に時間がかかると予想し,より扱いが簡単な煙の流れについて,そのガイド手法を考案することから始めた.そして,現段階において,煙のガイドについて世界において最新の手法(研究実績の概要に記載の方法)を提案し,既にコンピュータグラフィックスのトップカンファレンスであるSIGGRAPHへの採択が決定している.
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今後の研究の推進方策 |
既に採択が決定している煙のガイド手法(研究実績の概要に記載の方法)は煙を対象としており,これを単純に液体へ適用することから実験を進める.また,煙では計算領域を煙が存在する範囲全体に用意する必要があるが,液体の場合高精細化に必要なのは液体の表面付近の領域のみであるため,計算領域を表面付近に限定することでさらなる計算の高速化が可能かも合わせて検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はコロナウイルスの影響で関係する学会の開催がすべてオンラインとなり,学会参加にかかる旅費の使用が全く発生しなかった.そのため,旅費への使用を計画していた費用の一部を計算機のさらなる充実に充て,実験効率の向上を図った.しかし,すべてを使い切ることが出来なかったため,残額が発生し,それらを次年度に使用することとした. 令和3年度もいまだにコロナウイルスの影響が続いており学会の開催がオンラインになる可能性は高い.しかし今後の状況によってはオンラインと現地のハイブリッド開催や現地開催の可能性も考えられるため,令和2年度の残額を追加の旅費として使用することを計画している.
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